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『野性』『木星』

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 札幌で戦後最初に創刊されたのは昭和二十一年二月に更科源蔵が編集した『野性』である。参加したのは渡辺茂加藤愛夫小田邦雄桜庭幸雄鈴見健次郎阿部みつ、逢坂瑞穂、山内栄二永田洋平新妻博長光太鷲巣繁男海老名礼太小野連司古川善盛牧章造木内進入江好之らで、発行所は北方詩話会。初期には札幌に疎開中の百田宗治伊藤整も寄稿した。三十四年二月まで二六冊を刊行。八号まで編集した更科のあと、富樫酋壱郎渡辺茂が一五号まで編集した。一六号から河邨文一郎、佐々木逸郎堀越義三などが編集にあたり、リアリズムを基調としながら北海道を代表する詩誌のひとつとして開花した。十七年創刊の『木星』は旧小樽高商出身者による詩誌であるが、二十一年四月に復刊し、編集者の小柳透をはじめ主要同人の和田徹三桜庭幸雄笹部幹雄が札幌に在住したため七号(二十三年)から札幌に発行所を移した。主知的で洗練された抒情にあふれた誌面を特徴とした。『木星』の後継誌は二十五年二月創刊の『ケイオス』である。二十一年にはこのほかにともに八月創刊の『詩潮』と『ぼへみや』がある。『詩潮』は鈴木正志と恩田一を中心に若い世代の詩人を育成して二十三年十月まで一二号を出した。『ぼへみや』は九州の『建設詩人』に参加していた北海道の詩人が札幌で支部活動として詩話会を開催し、その参加者に呼びかけて久野斌、佐藤初夫高橋秀郎らが中心となって創刊され、二十二年五月まで七号を刊行した。

写真-5 『野性