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北海道出版文化祭

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 この出版ブーム期の昭和二十二年五月三十一日から六月六日まで、全国初の試みである出版文化祭が札幌で開催された。
 高倉新一郎北海道出版小史』と、日本出版協会北海道支部北海道出版物綜合目録』は、この出版文化祭の記念出版物として刊行されたものである。『北海道出版小史』は、戦中期までに刊行された出版物の紹介をしつつ、北海道の出版の歴史を江戸時代の木版本にまで遡(さかのぼ)って記述している。『北海道出版物綜合目録』は二十年七月から二十二年五月までに、日本出版協会北海道支部加盟の出版社・団体四〇社が刊行した単行本三〇九点、雑誌九三種、出版社一覧を掲載した目録である。この二冊は出版文化祭期間中、訪れた人々に配布された。当時の出版物・出版事情が把握できる、貴重な資料である。
 出版文化祭は、日本出版協会北海道支部主催で、道庁、各新聞社、札幌中央放送局、北海道帝国大学、その他関係各団体の後援の下に開催された。目的は「北海道に於ける出版活動の意義と実状を北海道民に理解せしめると共に更に全国に明示するの機会たらしめ、関係事業との協力を緊密にしてその飛躍的向上の機運を作ること」であり、そのために期間中さまざまな啓蒙的行事が催された(表2)。
表-2 北海道出版文化祭行事一覧
行事日時開催場所備考
記念講演会5/31, 6/1北大中央講堂講師:柳田国男,長谷川如是閑,久米正雄,
小林秀雄ほか
出版文化展覧会6/2~6第一会場 丸井
第二会場 三越百貨店
1:本のできるまで
2:北海道出版物の時代別展示
3:北海道出身著述家の著書その他
読書運動全期間
 ・読書指導座談会記念講演会講師の他,川端康成,中村光夫等が来道,指導に当たる
 ・読書に関する懸賞論文,随筆の募集選者:小林秀雄,川端康成,中村光夫
 ・放送講演,座談会読書週間
 ・刊行図書寄贈道内各出版社刊行の図書の供出を得て,道内有力図書館に寄贈し一般に閲読の便宜をはかる
 ・道内刊行雑誌で読書関係記事を特集
 ・北海道文学者大会6/3北大中央講堂本道在住者の文学一般に亘る理論追求,作品の批判,郷土文学の性格等についての対談会の開催
街頭録音放送5/31三越前または大通出版に関する質疑応答
記念出版北海道出版物綜合目録』『北海道出版小史
北海道出版小史』(昭22.5.25発行)『北海道新聞』(昭22.5.14)より作成。

 「読書指導座談会」は、各職域各文化団体において行われ、講師は「記念講演会」講師の他に川端康成、中村光夫等が指導にあたることになっていた。この二人はまた「読書に関する懸賞論文、随筆の募集」において、小林秀雄とともに選者を務めている。
 この他、道内有力図書館に道内出版社刊行の図書の寄贈、道内刊行雑誌で読書関係記事を特集、北海道文学者大会の開催といった読書運動が展開された。この運動は、現在も「読書週間」として引き継がれている。
 出版文化祭のメインイベントである「パネルディスカッション式文学論」については、『文芸復興』の創刊号(日産書房 昭22・12)に収録されている他、本章第一節文学で詳述している。