昭和二十五年(一九五〇)九月、総務部庶務課庶務係が市庁舎一階に広聴箱を設置したのが札幌市の広聴活動の始まりである。三十四年九月に設置された総務部広報課市民相談室では、市政についての苦情・要望の他に、法律、身の上、婦人生活、労働、交通事故などの特別相談を受け付けた。三十九年からは一年間の市の広聴活動をまとめた年報『市民の声』の発行を始めた。四十年に主婦に市施設を案内し市政への理解を深めてもらう「市民見学会」、四十三年に市民生活に密接に関わる事柄について市民の意識、関心、希望の度合いなどを調査し、市政執行の参考にするための市政世論調査を開始した。
四十六年六月、広聴活動をさらに充実させるために、秘書室渉外広報部に広聴課を新設し、市民向けに「市民の声を聞く課」という名称とした。同時に「市民の声を聞く巡回相談」も始め、一週間以内に苦情に回答する「七日以内の苦情処理制度」を採用した。区制実施により各区の総務課にも広聴係を置くと、市民の声は急激に増加した。広聴課は五十年七月に新設された市民局の広報部市民の声を聞く課となった(以上、市民の声 平14)。
四十九年四月、市政モニター調査がスタートした。これは市の主要な施策・事業等への市民の理解、期待について、年に三回(平成元年より二回)、選挙人名簿から無作為抽出した市民一万人に往復はがきでアンケートするものである(市政モニター結果 昭49)。これは平成十三年度より市民アンケートと名称変更されている。市政世論調査は専門調査会社が実施しているが、市政モニター調査、市民アンケートは市民の声を聞く課が実施している。
四十六年六月に初めての「市長懇談会」、八月には第一回「市長と語る会」が実施された。その後、仲よし子ども館と老人クラブを市長が訪問し、母親や老人の意見を聞く「市長を囲む移動相談室」、五十年十二月からは住民組織代表が市長を囲み特定のテーマについて意見・提案を出す「みんなで札幌を考えよう」という活動も実施された。後者は五十四年度をもって終了し、前者も五十六年度より「市長と語る会」に統合された。「市長と語る会」は当初、青年と婦人を対象に「明日の札幌づくり」について話し合うものであったが、途中から市民各層の意見を聞くものになった。六十一年度はボランティア、観光、サークル活動関係の市民と、六十二年度は健康づくり、札幌芸術の森と市民文化、国際交流をテーマに会がもたれている。平成二年度までで計一九〇回の「市長と語る会」が開催された(市民の声 各年版)。
こうして市の広聴活動は、六十年ごろに、①個別広聴(来訪・電話・文書・新聞投書などの市政相談)、②集団広聴(市長と語る会・区長懇談会・市民見学会など)、③調査広聴(市政世論調査・市政モニター調査)、④市政外相談(市職員対応の一般相談、弁護士をはじめとする専門相談員による法律相談・家庭相談など)に整理された。
区長懇談会は四十七年四月の区制施行とともに開始された。区側からは区長、副区長、各部課長、関係職員が、また連合町内会からは各町内会長・専門部代表、地区社会福祉協議会・民生委員協議会・青少年健全育成協議会・老人クラブなどの代表が出席する。連合町内会以外の団体との懇談会も行われる。区内二〇地区から五、六地区で区長懇談会を開催しており、年間では全区で七〇回から九〇回程度開催されている。区長懇談会では、道路、公園、歩道、除雪、街路灯、河川・排水路、下水道、学校、バス便数・路線、住民集会施設などの生活基盤整備を中心とした要望が多く出されている(市民の声 各年版)。