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広範な市民運動の展開

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 反核・反戦、平和・護憲問題など社会運動の多くは、北海道でも戦後一貫して社会党や共産党などと結合した労働組合の主導で進められてきた。しかし、反安保体制の崩壊や青年・学生運動の混迷・停滞、さらに社会党と共産党の主導権争いや統一戦線構想にともなう対立が顕著になるにつれ、既成組織とは異なる視点と組織の壁を越えて構成される、多様な目的別の市民団体による運動(活動)も活発になった。各種市民活動団体数は、市の調査によるだけでも平成十四年現在で延べ二〇〇〇団体、実数で約一五〇〇団体にのぼり(表7)、目的や活動内容、構成、人員規模は多様で多岐にわたる。環境保全を中心にしながら反原発運動や反核・反戦・平和運動と結合し、ときには主体的に労働団体や消費者団体などとも提携し、あるいは独自の運動を展開している。
表-7 札幌市の市民活動団体登録数(平成14年)
主な活動内容別団体数所在地別団体数
保健・医療・福祉303中央区202
社会教育220北区96
まちづくり224東区75
文化・芸術・スポーツ229白石区49
環境保全140厚別区36
災害救援36豊平区70
地域安全51北区27
人権擁護・平和推進123南区60
国際協力130西区88
男女共同参画74手稲区38
子どもの健全育成260市内全域745
団体活動援助等86
その他124
合計2,000合計1,486
札幌市市民局市民活動促進担当課『市民活動団体データベース』(平成14年7月現在)による。各団体の申告により登録されたもので、財団・社団などの法人や町内会などの団体は含まないが、これらの団体の中の1グループとして活動を行っている団体を含むものも一部ある。<主な活動内容別>団体数は他の活動を含む延べ数なので、<所在地別>団体数と合計数が合わない。

 昭和六十三年八月の広島原爆記念日には、留萌管内幌延町を出発した「泊原発凍結!道民の会」の「反核平和の火」が道庁西門前に到着し、歓迎集会参加者三〇〇人はデモ行進のあと北電本社を「人間の鎖」で囲み、同日、市内の寺院では宗教や政治の枠を超えた三〇団体による原爆被爆者追悼会が、また豊平川一条橋下流では、小・中学生による四〇〇個の灯籠流しが行われた(道新 昭63・8・7)。北電泊原発一号機の試運転が始まった同年十月二十三日、「泊原発凍結!」や泊原発訴訟原告団・生活クラブ生協・札幌地区労などの呼びかけで「泊を止める!道民大集合」が大通広場で開かれ、反原発グループや一般市民五〇〇人が北電本社前までデモ行進して原発反対シュプレヒコールを繰り返し、同日、別会場でも「泊原発ストップ集会」が開かれた(道新 昭63・10・24)。さらに十二月七日、市民団体主催の朝鮮人従軍慰安婦記録映画会が行われ、太平洋戦争開戦日の八日には、全道労協主催のシンポジウムや市民団体による「戦禍を語り継ぐ会」などが市内各所で開かれたほか、女性団体一〇〇人がデモ行進後、赤紙(召集令状)を配り平和アピールを行うなど多彩な活動を展開した(道新 昭63・12・8夕)。六十一年四月のソ連・チェルノブイリ原発事故による被害を機に反核・反原発運動の内容や輪も広がり、平成四年四月、被災児者の保養里親活動を目的とする「チェルノブイリへのかけはし」が結成された。平成七年の「4・26チェルノブイリデー」には北区で「かけはし」主催の「追悼・語り継ぐチェルノブイリ」が、また、大通六丁目広場では札幌平和運動フォーラムなど二〇団体による「原発にさよならしようよ」集会も開かれ(道新 平7・4・27)、翌八年四月、各支援団体の提携組織「北海道チェルノブイリ支援ネット」が結成された(道新 平8・4・27)。
 これらの団体の一部は表7にも含まれているが、表7はあくまでも各団体の任意申告に基づく登録団体数でありすべてを網羅するものではない。たとえば、十二年二月、道内一六市民団体により開かれた「戦争なんて認めない!市民運動大集会」(道新 平12・2・21)の加入数は、その後、三四団体に増加したが(うち札幌関係は表8)、表7に含まれていない団体も多い。同会は十四年、「非戦市民メッセージ展」を開催し、加入団体報告などに合わせて「非戦HOKKAIDO!市民メッセージ集」を発行した(道新 平14・6・18夕)。さらに十二年から十三年、全国的に「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書採択運動が展開され、一方、つくる会教科書や会の運動に反対する多数の市民団体が結成された。全道規模の講演会や集会が開かれたほか、十三年に入ると「つくる会」から「学習指導要領に沿った」教科書採択を求める請願が市議会に提出され、これに対して市民団体からは「憲法や教育基本法の原則の順守」を求める八件の陳情や請願が提出されるなど、「つくる会」教科書採択をめぐる激しい論議や活動が展開された(道新 平13・1・31)。
表-8 「戦争なんて認めない!市民運動大集会」市内参加団体(平成14年11月現在)
種別参加団体名所在地
憲法・人権・歴史
(9団体)
あごら札幌西区
アムネスティノルテ札幌西区
女のスペース・おん中央区
外国人登録法問題取り組む北海道キリスト教連絡協議会
憲法第9条の会・オーバー北海道東区
札幌郷土を掘る会東区
日本の戦後責任を清算するため行動する北海道の会中央区
ベトナム枯れ葉剤被害者を支える札幌市民の会南区
北海道アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会北区
藻岩犠牲者の碑を維持する会南区
反核・反戦・非戦
(10団体)
核戦争に反対する北海道医師・歯科医師の会東区
グリーンファンド(エネルギーの会)
原水爆禁止北海道協議会北区
新ガイドライン戦争法と憲法9条改悪に反対する市民の会南区
戦争なんて認めない!市民運動大集会南区
撫順の奇跡を受け継ぐ会北海道支部豊平区
北海道ピース・アニメの会東区
北海道おおきな株の会西区
北海道平和委員会中央区
無防備・非核ネットワーク北海道西区
教育:日の丸・君が代、教科書問題
(3団体)
君が代・日の丸の強制と法制化に反対する札幌市民の会豊平区
子どもと教科書北海道ネット21東区
日の丸君が代に反対し行動する会東区
平和人権学習
(2団体)
さっぽろ自由学校「遊」中央区
「週刊金曜日」札幌読者会北区
戦争なんて認めない!市民運動大集会事務局『市民うんどう団体紹介』による。所在地は原則として事務局所在地。