38
一、教育に関する勅語の聖旨を奉戴(ほうたい:おしいただく)し、常に実践躬行(きゅうこう:みずから行う)を励むべし
一、校規を遵守し、師長を尊敬し、其教誡(きょうかい:おしえいましめる)訓諭に服従すべし
一、学業に精励し労働を重んじ常に質素を旨とし摂生に注意すべし
一、信義を守り廉耻(れんち:心がきれいで、不正なおこないをはじること)を重んじ、礼節を慎み誠実を旨とし、温良の徳を養はん事を務むべし
細 則
第一 敬礼
一、敬礼は上下の分を明にし秩序を正し、中心より恭敬の実を表するを要す
一、普通礼は先つ直立の姿勢を取り、先方の眼に注目し、上体を屈すると共に手は自然に下げて其指尖(ゆびさき)を膝頭に近づかしむるを度(ど:物事の基準・標準とすべきもの)とす
一、最敬礼は先づ直立の姿勢を取り、先方の眼に注目し、上体を徐(おもむろ)に屈すると共に手は自然に下げて其指尖を膝頭に達するを度とし、凡て一呼吸の後徐に元の姿勢に復すべし
(改頁) 39
一、帽を冠(かぶ)りたる時の敬礼は右手にて脱帽し、其内面を右外服に向て軽く之に触るゝ様にして行ふべし
一、尊長(そんちょう:自分より目上のひと)に行逢ひたる時は、数歩手前にて左に避け敬礼をなすべく、知人に行逢ひたる時は少しく手前にて一礼すべし
一、尊長の室に入らんとする時は、先つ脱帽して入室し、上位にある人に対して敬礼をなし、次に在室のものに敬意を表すべし
一、尊長の前に出る時は、大凡(おおよそ)其人の数歩前に於て敬礼を行ひたる後、便宜の位置に前進し事終らば退きて旧位に復し、更らに敬礼したる後転回して静かに退出すべし
一、生徒相逢ふ時は互に礼をなすべし
一、通過及行逢の礼を行ふに際し、携帯品ある時は之れを左手に持ち若しくは左脇に抱くべし、但両手携帯品ある場合には脱帽せずして礼をなすも妨げなし
第二 教室
一、始業の号報あれぼ直に教室に入り自席に着席すべし
一、終業の時には教師の退去後にあらざれば席を離るべからず
一、課業時間の外、猥(みだ)りに教室に入るべからず
一、課業の絡始には級長の合図により教師は敬礼を行ふべし
一、後れて教室に入る時は、教師に対して敬礼をなし直立して指揮を待つべし
一、敬礼すべき人教室に臨みたるときは、教師先敬礼をなしたる後教師又は指揮者の令には一斉に起立し敬礼をなすべし
一、教室には課業に必要なる書籍文具の外の物品を携帯すべからず、且必要なる文具書籍は貸借を禁ず
一、教室に備付の黒板・図書・器械・標本・薬品等は教師の許可なくして使用すべからず
一、課業中病気又は止を得ざる事故のため、業を受け難きときは教師の指揮を乞ふべし
一、教室は主任の指揮により之を整理し、且交替掃除の任に当り清潔を保つべし
一、掃除当番者は教室当番日誌を記載して退校の節学級主任に提出すべし
第三 控所(注14-1)
(改頁)
一、帽子外套其他凡て携帯品は指定の場所に整理し、決して乱雑ならしむべからず
一、紙屑反古(ほご:不要になった紙のこと)其他不用品は猥りに放棄すべからず
一、生徒控所にありては定時の外、決して食事をなすべからず
一、猥りに小使室に立入るべからず
第四 服制
一、生徒は制服制帽を着用すべし
但、止(やむ)を得ざる時は学級主任の許可を得て、筒袖袴を以て代用することを得
一、制帽は海軍形にして地質(じしつ:きじ=生地)は黒色羅紗とし、制定の徽章を付するものとす
但、夏季は帽(自6月1日、至9月30日)白木綿の日覆をなすべし
一、夏帽を用ふる場合は次の如し
夏略帽麦質索裨(注14‐2)普通編み方形普通形鍔(つば)の広さ三寸以内鉢巻黒色蝶結び所定の帽章を前面に付す
一、上衣に立襟背広形前角の釦(ボタン)止めにして、地質冬服は黒色の小倉とし、夏服は霜降り小倉とし凡(すべ)て所定の釦を用ふ。袴は普通のヅボンとし地質上衣に同じ
一、外套調製を要せず。時宜により制定することあるべし
一、脚胖(きゃはん)は素色麻製のものとす
一、6月1日より9月30日までは夏服を着し、其他は冬服を着用すべし
一、靴は知靴(注14-3)紐付に限る
一、校舎内は赤緒上草履(ぞうり)を用ふべし
第五 欠席及遅刻
一、病気其他止むを得ざる事故により欠席せんとする時は、当日始業時間前、其事由及日数を記載し、寄宿生は舎監の認印を受け、通学生は父兄若くは保証人連署を以て、速に校長宛の届書を学級主任に差出すべし
(改頁) 40
但、当日届書を差出す能はざる時は、当日より3日以内に必ず届出づべし
一、欠席届出日限内に出席したる時は其旨学級主任に申告すべし
一、病気欠席1週間以上に渉る時は医師の診断書を添付すべし
病気又は事故の為め遅刻又は早帰したる時は、其旨学級主任に届出づべし
一、届出の手続を履行せずして欠席・遅刻数度に及ぶ時は相当の処分を為すべし
第六 雑則
一、時々の訓示・告示等は掲示場に掲けたる時より、一般に知了したるものと認むるを以て常に能(よ)く之に注意すべし
一、掲示を破毀(はき:破りすてる)塗抹し又は戸壁等に楽書するものは相当の処分を為す
一、生徒は校の内外を問はず、飲酒するを禁ず
一、生徒は校の内外を問はず、喫煙をなし及び喫煙の用具を携帯すべからず
一、尊長同伴の外、飲食店・劇場に立寄るべからず
一、許可なくして諸種の集会を催し又は金銭を募集すべからず
一、校内の建物其他器物を汚損破毀し、又は作物に加害したる時は相当の弁償をなさしむ。其(それ)故意に出でたるものと認むる時は尚懲罰を加ふ
一、卑野陋劣(ろうれつ:いやしい、みにくい)なる言行を為す可(べか)らず
一、風教に害ある書籍・新聞紙・雑誌等はこれを閲覧すべからず
一、生徒は相互に金銭品物を貸与すべからず
一、校用品及び貸与の物品・書籍等は丁寧に取扱ふべし