◎日本産重要針葉樹種子識別法

            10
重要日本産針葉樹種分類表を掲ぐ
杉科に属するもの
 羅漢柏(ヒバ) 海(テウセンマツ) 花柏(サワラ) 唐檜(トウヒ) 金(コウヤマキ)
 扁柏(ヒノキ) バラモミ 杜(ネヅズミサシ) 栂(ツガ) 広葉杉(コウヨウザン)
 柏槙(ビヤクシン) 偃(ハイマツ) 〓(ネズコ)(注15) 落葉(カラマツ) 赤(アカマツ)
 側柏(コノテガシワ) 姫子(ヒメコマツ) 杉(スギ) 樅(モミ) 黒(クロマツ)
            白檜(シラビソ) タケモミ
                     ウラジロモミ
公孫樹(いちょう)に属するもの
    榧(カヤ)     銀杏(イテフ)
    一位(アララギ)  油榧(イヌガヤ)
    羅漢(マキ)   柏(ナギ)
種子の記載
一、羅漢柏(ヒバ)
種子の緑の二羽が僅かに存在して居つて、種の大さは長4.7mm、巾2.9mm、厚さ1.1mmで其の形状は、両面の突出するものが一方扁(ひら)たくして一方突出て居るものがあり、或は凹(くぼ)むものあり、或は角を有するものがある等、極めて不規則で鮮明なる紫黒
 
  (改頁)      11
 
あります。羽の縁も之れと同様のを呈して居(お)ります。
一、花柏(サワラ)
種子の形状は卵形に近く先端が尖(とが)りて基部に羽がありません。種子のは羽のよりも濃く種子羽共に紫黒で、2枚の同形なる羽は種子の左右に生じ先端に於て相合して居ります。羽の構造は柔かくて半透明で其表面に皺(しわ)があり、種子によりては羽を三方に生ずるものがあるなれども其数が極めて少なくあります。
一、扁柏(ヒノキ)
種子は濃き紫黒を呈して長卵形であります。先端尖り僅かに羽を以て掩(おお)はれ、基部には羽がなく羽は二方又は三方に生じ長さの方向に走つて居ます。其鮮明なる紫黒沢があります。
一、〓《ネズコ》
種子は細長くて平たくあります。特に注意すべきは幅及厚さに比して長さの長いことであります。羽は種子を囲み長さの方向に走つて居つて、基部及び先端は殆んど種子の長さに等しき丈け羽を以て掩はれて居ります。故に羽の長さは殆んど種子の3倍ありまして、は黄を帯びて居る紫黒あります。種子のは羽よりも多少濃厚であります。
一、杉(スギ)
此種の種子の形状は扁平なるもの又は三つの角あるものが多いが、極めて不規則なる形を有するものであります。は鮮明なる紫黒で同の狭き羽が僅に存して居るのがわかります。此羽は種子の尖端に於て稍(や)や巾が広くあります。
一、広葉杉(コウヨウザン)
種子は甚だ濃厚なる紫黒を呈し居つて、形状は殆んど等脚三角形に等しく尖端が円く扁平であるけれども、両面が少しく突出し羽は二枚の同様なるものより成り、種子を固く包んで容易に分離することが出来ません。其羽の尖端に少しく裂け目がありは見悪(みにく)き紫黒あります。
種子に就いて最も注意すべきは其面が著しく扁(ひら)たいことであります。は紫黒で基部は稍(やや)円形に近く、2枚の同様なる羽が種子を蔽(おお)ひ相密着して容易に離れず、種子の尖端に於て少しく裂け目を有して
 
  (改頁)
 
居ります。
一、落葉(カラマツ)
種子の形は倒卵形(とうらんけい)をなして居りまして、は白で灰を呈し質が堅固であります。羽は種子と共に成長して容易に離れず、鮮かなる紫黒を呈し、其の長さは種子の長さの2倍乃至(ないし)3倍の間にあります。長刀形をなして羽は種子の下方の縁を蔽ふて居ります。
一、栂(ツガ)
種子の形状は小さき倒卵形をなして居ます。其腹面には脂の腺があつては鮮かなる黄紫黒を呈し、羽のも之と同様で種子の表面全部を蔽ひ、其の長さは殆んど種子の長さに等しくあります。
一、樅(モミ)
種子のは青少しく白を帯びて形状は楔形(くさびがた)をなして居ますが、羽を以て蔽はれたる部分は濃くして脂腺の班点があります。羽の固有のは黄紫黒(多少青緑を帯ぶ)で空気中に置くときは少しくは変して濃厚となります。羽の幅は種子の幅の2倍より3倍の間にありて尖端に於て断絶して居ます。
一、白檜(シラビソ)
は青少しく白を帯んで単あります。形ちは羽と同じく楔形で脂を含む。羽のは濃き青にして種子と共に成長し、種子の表面及び裏面の大部を蔽ひ尖端に於て殆んど直線に切断されて居ます。
(以下次号)