市街地の近郊、山麓地帯、河川流域などに散在する村落の周辺は、農耕地、放牧場、採草地、採石場として自然状態の失なわれているところが多いが、概観して亀田山脈の中腹から稜線にかけては深々とした森林に覆われており、原生林、またはそれに近い林相、あるいは天然更新林等もあって、自然植生の遷移過程をも見ることができる。
ブナ、イタヤカエデ林、林床チシマザサ 三森山付近
ブナ(果実をつけている) 鱒川付近
エゾノダケカンバ林 袴腰岳森林限界付近
●高木層
低部山麓地帯にはスギ、カラマツ、トドマツ、ドイツトウヒ、エゾマツなどの植林地も見られるが、自然林はほとんどが落葉広葉樹を主とする雑木林である。山麓または河川流域の低地から中腹にかけての林冠構成種の主なるものは、
ドロノキ、ヤマナラシ、カラフトヤナギ、エゾノカワヤナギ、キヌヤナギ、サワグルミ、オニグルミ、サワシバ、ヒメヤシャブシ、アカシデ、アサダ、サイハダカンバ、シラカンバ、エゾノダケカンバ、ヤチハンノキ、ヤマハンノキ、ケヤマハンノキ、ブナ、クリ、ミズナラ、コナラ、ハルニレ、オヒョウニレ、コブニレ、カツラ、ホウノキ、キタコブシ、ミヤマザクラ、エゾヤマザクラ、ウワミズザクラ、エゾノウワミズザクラ、シウリザクラ、アズキナシ、カマツカ、ナナカマド、イヌエンジュ、キハダ、ニガキ、ヤマウルシ、ヒロハツリバナ、エゾツリバナ、オオバマユミ、ムラサキツリバナ、ヤマモミジ、ハウチワカエデ、イタヤカエデ、ベニイタヤ、トチノキ、シナノキ、モイワボダイジュ、オオバボダイジュ、コシアブラ、ハリギリ、ミズキ、ハクウンボク、アオダモ、ヤチダモ、ハシドイ |
などである。
おおよそ、標高600メートルを超える付近から次第に樹種を減じて、亜高山帯の様相が目立ち、次のようなものに限定される。すなわち、エゾノダケカンバ、ヤマハンノキ、ミヤマハンノキ、ミヤマザクラ、エゾノウワミズザクラ、ナナカマド、ミネカエデ、ホザキカエデ、イタヤカエデ、コシアブラなどであるが、稜線の一部には、ミネヤナギ、ミヤマナナカマドなどが、低木状に矮(わい)生しているミヤマハンノキやエゾノダケカンバの中にわずかに混生しているという高山帯に近い植生も見られる。
針葉樹は森林を形成するに至らず、イチイ、ヒメコマツ、トドマツ、エゾマツの4種が、落葉広葉樹林内に点々と混生しているに過ぎない。
●低木層
林内や林縁に生育している低木や蔓(つる)木には次のようなものがあって、その大部分が温帯系に属するものである。
ハイイヌガヤ、バッコヤナギ、キツネヤナギ、イヌコリヤナギ、エゾハシバミ、ヒロハヘビノボラズ、クロモジ、オオバクロモジ、ノリウツギ、エゾアジサイ、エゾスグリ、コマガダケスグリ、ノイバラ、クマイチゴ、クロイチゴ、ウラジロイチゴ、エゾイチゴ、ナワシロイチゴ、ホザキナナカマド、エゾノコリンゴ、エゾユズリハ、フッキソウ、ヌルデ、ミツバウツギ、アカミノイヌツゲ、コマユミ、クロウメモドキ、キブシ、ナニワズ、カラスシキミ、アキグミ、ナツグミ、ウリノキ、オニウコギ、タラノキ、ヒメアオキ、ハナイカダ、リョウブ、ミヤマホツツジ、コヨウラクツツジ、エゾヤマツツジ、ムラサキヤシオツツジ、サラサドウダン、ヒロハハナヒリノキ、アクシバ、シロバナシャクナゲ、コメツツジ、オオバスノキ、ミヤマイボタ、ムラサキシキブ、クサギ、クロミノウグイスカグラ、ウグイスカグラ、カンボク、アラゲガマズミ、ミヤマガマズミ、エゾニワトコ、ムシカリ、タニウツギ、ヒョウタンボク、エゾヒョウタンボク、イワガラミ、ツルアジサイ、ツタウルシ、ヤマブドウ、サルナシ、ミヤママタタビ、マタタビ、チョウセンゴミシ、マツブサ、ツルウメモドキ。 |
ミヤママタタビ 雁皮山
ササ類はチシマザサ(ネマガリダケ)、チマキザサ、クマイザサなどが見られ、特にチシマザサは中腹から稜線近くにわたって広く分布し、ところにより純群落を形成、または樹林下に侵入して林床を占有している。
ハイマツは袴腰岳近くの稜線にわずかに点在していて、大きな群落は見られない。