古銭と古甕(市立函館博物館蔵)
前編第5章第2節においてくわしく述べているように、志海苔館付近から出土した大量の古銭は、往時の館主を中心とした箱館地方の経済活動を知る貴重な史料というべきで、その3個の古甕からしても、当時、箱館が越前、能登方面においても商品流通の関係が、いかに深かったかを証明するものである。
このように室町時代以降、道南一帯に諸館が割拠するようになると、すでに交易は、地域支配者として館主が主体となって独占し、アイヌとの間では物々交換が主であったが、本土商人との間では通貨が使われていたことは、あえて志海苔の例だけではなく、上ノ国花沢館・洲崎館の付近にも多く銭貨が出土していることでも察しられる。