奥羽5藩の警備と箱館

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 (ハ)の問題については、既に多くの文献で触れられているので、ここでは次のことを記すにとどめておきたい。幕府は、安政2年3月27日、津軽・南部・松前、仙台・秋田の5藩に松前・蝦夷地の警備を命じ(『幕外』10-77)、4月14日には警備地域を定めたが、これら5藩の警備地域と元陣屋、出張陣屋の所在地は次の通りであった(『幕外』11-9)。
 
津軽藩-警備地域(箱館表、千代ヶ台~エサン岬持場心得、乙部村~西蝦夷地ヲカムイ岬間、西蝦夷地惣体の援兵心得)、元陣屋(千代ヶ台)、出張陣屋(西蝦夷地スツツ)
南部藩-警備地域(箱館表出岬警備専用心得、エサン岬~東蝦夷地ホロベツ間、東蝦夷地惣体の援兵心得)、元陣屋(箱館字水元より谷地頭の内)、出張陣屋(東蝦夷地エトモ)
松前藩-警備地域(木古内村~七重浜間)、元陣屋(有川村)
仙台藩-警備地域(東蝦夷地シラヲイ~シレトコ迄の内、島々共一円)、元陣屋(東蝦夷地ユウフツ)、出張陣屋(東蝦夷地子モロ、クナシリ島、エトロフ島)
秋田藩-警備地域(西蝦夷地ヲカムイ岬~シレトコ迄惣体、北蝦夷地島々共一円)、元陣屋(西蝦夷地マシケ)、出張陣屋(ソウヤ〔夏期出張、北蝦夷地応援心得〕、北蝦夷地3月~8月間、冬はマシケ元陣屋〔引揚〕)

 
 これら諸藩の松前・蝦夷地警備にかかわる現地での指揮・命令権は箱館奉行にあり、しかも、蝦夷地経営とのかかわりで数多くの配下の幕吏が蝦夷地に派遣されたため、これらに関する箱館奉行の仕事は一挙に増大することとなった。また、上記の諸藩の松前・蝦夷地警備と箱館との関係では、特に南部藩が箱館山麓に、津軽藩が千代ヶ台に各々元陣屋を設けるとともに、ともに箱館市中及び周辺地域の警備に当たっただけに、当期の箱館の警備・経済・社会に与えた両藩の影響はすこぶる大きかった。