(5)第四期恵山町総合計画(平成八年度~平成一七年度)

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  漁業のさらなる発展を求めて(第四期恵山町総合計画)より
第二章 まちづくりの施策大綱
第3節 活気ある産業を育むために
 智恵と工夫が生きる豊かで活力に満ちたまちづくりをすすめていくための新しい産業基盤の推進方向を示します。
一、水産業振興の方向
【基本的考え方】
 海を活かした豊かな町を実現するため、漁港の整備をはじめ漁業生産基盤の整備を促進するとともに、若い人材・後継者の育成・確保を図りながら、ウニ、コンブ等の生産加工や育てる漁業の発展など付加価値の高い恵山漁業の形成・確立に努めます。
【施策の方向】
①漁業生産活動を拡大、効率化するため、漁港の改修・整備を促進するとともに、育てる漁業を推進するため、魚礁の設置や浅海漁場の整備など漁業生産基盤の整備を進めます。
②種苗の放流など漁業資源の増殖と確保を図り、育てる漁業の振興・拡大に努めるとともに、後継者など人材の育成と確保、流通改善や加工の推進など漁業経営の安定化に取り組みます。また、遊漁や観光との調和を図ります。
③海岸・平磯地帯の未開発地の活用・整備を図るとともに、地域の資源や人材を活用した地域・地先型漁業生産の拡大・育成を図ります。
【施策の体系】
 漁業生産基盤の整備/漁港の整備、生産基盤施設の整備
 漁業経営の近代化/育てる漁業の振興、漁業経営の安定、加工・流通体制の確立
第一節 水産業振興計画
一、漁港・漁場
【現況と課題】
○漁港は、地域づくりの拠点として大きな役割を担っており、漁業生産の基盤施設として重要な基地であり、安全操業や能率の向上、漁船の保全のためには、不可欠な施設です。
○本町には、日浦漁港(第一種)、大澗漁港(第二種)、女那川漁港(第一種)、
 山背泊漁港(第四種)、恵山漁港(第一種)の五つの漁港があり、昭和六三年度から第八次漁港整備計画に基づいて事業が進められてきました。それぞれの漁港に適応した施設が増設されて、漁港の機能が充実してきており、利用漁船数が年々増加しています。
○しかしながら、老朽化による防波堤の破損や消波工の沈下による越波及び振り込み波が激しいなど、漁船の係留や保全に支障をきたしている面もあり、平成六年度からの第九次漁港整備計画に組み込まれ、早期完成に向け整備が進められています。
○今後、漁業生産の増大を図り、漁業後継者の流出に歯止めをかけるうえでは、その基盤となる漁港の一層の整備を図っていく必要があります。
○なお、漁港の整備にあたっては、漁場の消滅や海域環境への影響を最小限にとどめるよう配慮していく必要があります。
○また、漁業者の高齢化が進んでいることや開かれた漁港づくりが求められてきていることなどに配慮し、漁港の整備においては高齢者対策や憩いの場施設整備、外来船・遊漁船への対応できる機能等を備えた施設整備の計画的利用の配置など施設整備を進めて行くことが重要です。
○海岸整備については、集落が形成されている地域の海岸保全・防災対策は、高波、高潮、海岸浸食など保全整備を図っておりますが、未整備箇所も多く、今後も整備を図っていく必要があります。
 また、海岸の砂場、岩場・平磯地帯は未開発、未利用地帯が多く漁場開発に適しており多様な利用が考えられることから海岸の砂場・岩場地帯を利用した漁場開発を行い、地先型漁業生産の基地づくりを促進する必要があります。
【施策の体系】
一、漁場環境および漁港・海岸の整備
 一)漁港の整備促進
 二)漁場環境の整備促進
【主要な施策】
一、漁場環境および漁港・海岸の整備
 一)漁港の整備促進
 ①漁業生産活動の効率化及び近代化を図り、多目的利用が可能な漁港機能が十分に果たせる漁港施設整備を目指して、第9次漁港整備計画による漁港の早期完成を要請します。
 ②山背泊漁港改修事業(南護岸)と多目的施設の整備と畜養施設整備の促進に努めます。
 ③女那川漁港改修事業(東護岸)の促進に努めます。
 ④大澗漁港修築事業(外防波堤)と多目的漁港としての整備を目指し、蓄養漁場を組み入れた施設整備の促進に努めます。
 ⑤日浦漁港改修事業(東護岸嵩上げ)の促進に努めます。
 ⑥外来漁船等が係留できる場所の確保に努めます。
 ⑦陸揚げ岸壁の不足解消と係留施設の増設に努めます。
 ⑧漁港周辺環境美化の推進に努めます。
 二)漁場環境の整備促進
 ①獲る漁業から育てる漁業を推進するため、漁業生産基盤施設の整備促進に努めます。
 ②沿岸漁業活性化構造改善事業(自然石投入)の推進に努めます。
 ③沿岸漁場整備開発事業(並型魚礁設置)の推進に努めます。
 ④新日本海漁業振興特別対策事業(ウニ礁ブロック)の推進に努めます。
 ⑤増養殖場造成改良事業(築いそ)の推進に努めます。
 ⑥海岸地帯の砂場地帯を利用し囲い礁による岩礁地帯の拡大、岩場・平磯を利用した陸地形生産基地など、地先型の新しい漁場づくりの促進を図ります。
 ⑦漁場の荒廃に対応するため、雑草駆除に努めます。
 ⑧増加する組織的な密漁に対応するための監視施設の整備を図ります。
 ⑨一般遊漁者が利用できる施設の整備を図ります。

第4種 山背泊漁港


第1種 日浦漁港


第1種 恵山漁港


第2種 大澗漁港


えさん漁業協同組合


第1種 女那川漁港


事業計画(平成8年度~10年度)

二、漁業経営
【現況と課題】
○近年、北海道を取り巻く漁業環境は、漁獲量の低下や魚価の低迷、高齢化や後継者の不足など、非常に厳しい状況に直面しています。
○二〇〇カイリ元年と言われた昭和五二年以降、各国の漁業規制は年々強まる一方、二度にわたるオイルショックによって燃油や漁業資材が高騰し、さらに、魚価の低迷等によって、漁業経営を維持することは極めて困難な状況にあります。
○特に、津軽海峡における魚族資源は、ここ数年来の潮流異変により回遊魚種の大幅な変遷が見られ、加えて太平洋海域や日本海における外国大型トロール船の操業等により、底魚類や大型回遊魚の当海域・沿岸への回遊が極度に減少しています。
○本町の経済は漁業を基盤として発展してきましたが、この漁業の盛衰は町の経済全体に大きく影響しています。このため、本町の産業振興においては、「海」と言う資源・条件をどう活かしていくかが重要な課題となります。
○本町の漁業は、養殖コンブ・ウニからなる採捕漁業とタラ・ホッケ・タコ・イカ等を対象とした漁船漁業から成り立っていますが、経済的に不安定で経営体・漁業者数ともに減少しています。
○このような中で、本町の漁業は、獲る漁業から育てる漁業への転換が求められており、沿岸地域における栽培漁業の適地化や漁場造成による増養殖事業などのつくり育てる漁業を積極的に推進しているところです。
○本町では、育てる漁業の基盤をつくるため、従来より、国・道の事業を活用しながら、自然石投入などの沿岸漁業活性化構造改善事業や囲い礁・ブロック投入による魚礁設置などの沿岸漁場整備開発事業を積極的に実施しています。
○今日、漁業づくりは、山づくり計画からと、沿岸漁場整備と並行して森林整備の必要性が見直しされてきています。
○本町においても、森林の伐採、開発などにより、土砂流出による漁場の埋没、大量の川水が一度に流れ出ることによる水産植物の壊滅的な減少がおきており、それら防護対策が急がれています。
○漁業経営の主体である漁船漁業は、水揚げの減少や魚価の低迷などの問題を抱え、特に依存度の高いマダラが激減し、大幅な減収となっており、漁船漁業にとって深刻な問題となっています。このような中で、資源の回復を図るため漁協青年部ではマダラの研究に取り組んでいます。
○天然コンブについては、生産量が安定せず、特にマコンブが年々減少しています。
○コンブ養殖は、養殖技術の向上によりほぼ安定した生産量が確保されていますが、価格の変動が激しく、養殖漁家の経営が不安定となっています。また、コンブ養殖の利用可能な海面は極めて狭く、今後、生産拡大のためには沖合いに施設を設置するなど利用海面の拡幅を図る必要がありますが、漁船漁業との海面調整等も課題となってきます。
○ウニについては、移殖及び人工種苗の放流などを進め、資源増大を図っていますが、移殖については、沖合の資源の減少が著しく計画の推進が難しくなっており、また、人工種苗生産についても、異常気象等により計画の推進に大変な労力を重ねているのが現状です。今後、生産の拡大を図るためには、採苗施設や中間育成施設の整備拡充を進めていく必要があります。
○今後、限られた生産高の中でいかに付加価値を付けていくかが重要な課題であり、「売る漁業」をめざし、消費者ニーズに合った水産物の生産を進めるとともに、観光との連携等も考慮しながら流通販路の拡大に取り組んでいく必要があります。
○町内の漁業協同組合や関係機関では、後継者育成事業や水産技術取得・普及事業などの人材育成事業を推進しているほか、漁協青年部では「海を育てる会」の組織を結成し、養殖コンブ育成事業やマダラ・クロゾイ放流事業などに取り組んでいます。
○本町には、日浦・尻岸内古武井・恵山漁業協同組合の四つの漁業協同組合があり、それぞれ運営がなされていますが、漁業生産高の伸び悩み、経営効率の悪化などにより経営が厳しい状態となっており、町内各漁業組合の合併統合の促進が望まれます。
○なお、開かれた海づくりが求められており、高齢者への対策などを視野におきながら、遊漁等への取り組みをしていく必要があります。
【施策の体系】
一、漁業資源の確保
 一)増養殖漁業の推進
 二)沿岸漁場の整備開発
二、漁業経営の安定
 一)漁業経営の体質強化
 二)流通の改善と加工の促進
 三)漁業経営の安定化
 四)遊漁、観光との調和
【主要な施策】
一、漁業資源の確保
 一)増養殖:漁業の推進
 ①ウニの生産増大を図るため、.人工種苗放流、深浅移植などを促進します。
 ②魚類の資源増大を図るため、有用魚類の稚魚放流を実施し、底棲魚類と回遊魚の滞留繁殖の促進に努めます。
 ③マダラ中間育成技術開発支援事業及び中間育成施設整備事業の促進に努めます。
 ④漁業者の高齢化対策として、コンブ・ウニの増養殖施策に続く新たな軽労働施策を研究します。
 二)沿岸漁場の整備開発
 ①ウニの地先型増殖場造成事業(囲い礁)の促進に努めます。
 ②魚類の資源増大を図るため、人工礁設置事業、大型魚礁設置事業、並型魚礁設置事業の促進に努めます。
 ③コンブの生産増大を図るため、築いそ(自然石投入)事業、増殖場造成事業、雑草駆除事業などの促進に努めます。
 ④タコ産卵礁設置事業の促進に努めます。
 ⑤漁場の保全、漁場づくりに、森林整備の促進とそれら環境づくりの推進に努めます。
二、漁業経営の安定
 一)漁業経営の体質強化
 ①漁業担い手育成制度の整備による担い手の確保に努めます。
 ②近代的な経営感覚を持つ漁業者の育成に努めます。
 ③過剰投資の抑制など安定的な漁業経営確立の指導強化に努めます。
 ④漁業経営者及び担い手育成講座の開設や研修機会の拡大に努めます。
 二)流通の改善と加工の促進
 ①海水循環施設を完備した活魚蓄養施設の整備を図ります。
 ②水産物加工処理施設の整備促進を図り、付加価値の向上に努めます。
 ③地域水産物のブランド化を図ります。
 三)漁業経営の安定化
 ①漁協の体質強化と経営の健全化を求めていきます。
 四)遊漁、観光との調和
 ①遊漁の状況調査による遊漁者と漁業者が共存できる体制づくりを推進します。
 ②水産物展示販売施設整備による物産の販売とPRの推進に努めます。