戸井や戸井附近の山で、400米を越えるものは、毛無山と丸山だけで、他はすべて400米以内の低い山ばかりである。山は低いが海岸までの距離が近いため、麓までの傾斜が急である。したがって、これらの山に源を発している原木川、熊別川、戸井川等の上流から中流までは、深い渓谷を穿(うが)ち、流れは極めて急である。
釜谷、小安などの戸井西部地域は、東部より一層、山が海岸に迫り、運荷川、小安川、タカ屋敷川などがあるが、源をなす沢が浅く何れも小流である。
山麓から断丘の縁までの距離は短かく、断丘の下から波打際までの距離もまた短かい。小安、釜谷、浜町などに砂浜があるが、その幅も極めて狭い。
このように殆んど400米以下の低い山が連続して海に迫り、小さい川や小さい沢よりない平凡な地勢、地形の地域であるが、不思議な位植物の種類の多いところである。例えば標高1167米の横津岳の7、8合目にある高山性の植物が、戸井では僅か400米内外の笹積山、丸山、毛無山附近に分布し、横津岳の5合目前後の地帯でなければ見られない植物が、戸井では原木川、熊別川、戸井川などの沢にたくさん分布している。尻岸内、銭亀沢、七飯、鹿部、南茅部、砂原などでは見られないもの、或は稀生のものが数多く生育している。
このように戸井地域に植物の種類が多いという理由は
①この地域の地質構造から判断して、他地域より早く地殻の変動が終って安定した地域であること。
②北海道の最南端であること。
③本州と最短距離の地域であるので、風、海流、鳥類などによって本州から種子や胞子が運ばれたこと。
④津軽海峡の西口、松前沖からはいる暖流黒潮と、東口、恵山沖からはいる寒流親潮とが、ちょうど戸井沖でぶつかり合うこと。
以上のことを綜合して考えて見なければ、説明のつかない問題である。
戸井の植物(1)
ウメバチソウ
シラネアオイ
オオサクラソウ
マツムシソウ
エゾオグルマ
フタリシズカ
ヒトリシズカ
オオバキスミレ
戸井の植物(2)
ハクサンチドリ
クマガイソウ
ハマウツボ
クガイソウ
チゴユリ
ジャコウソウ
センニンソウ
ラセイタソウ
シロバナイカリソウ