昭和八年

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 不景気風の吹きすさぶ昭和八年一月、一挙にこの不景気風を吹に飛ばそうとする人が出現した。即ち古武井に時価数百万円の金鉱が存在するという話で、地元民はもとより近村住民の期待と羨望の目差を受けながら試掘されたが結果は失敗であった。昭和初期から続いている経済悪化状況の中で、このような試みでもしなければ、どうにも、はけ口のない気持ちがこのように金掘りに向かわせたものであろうか。
 
    昭和八年一月五日 函館毎日新聞
     時價數百萬圓
       古武井にも金鑛
         村民の物凄い意気込み
   北見の三木武吉氏の金鑛と對照した道南の渡島國亀田郡尻岸内村字古武井金脈が現れたが函館からの自動車を古武井市街で降り立ち約一里をへだてた露頭金鑛地域は虻田郡豊浦村星野昌七氏の出願であって某工学博士や有力者等の一隊が大理想をえがいて居り數百萬圓と言ひ囃され話題の中心をなしている同村役場でも採掘確實性と見てか同鑛附近の道路改修等も行ひ時節柄救済工事として待望住民の意気込も素晴らしいものであり附近一帯は有望地域らしく幾隊かの山師連が入り込み北見の雄武と好一對である。
 
・三月三日 東北・北海道を襲った地震により津波が発生、この時椴法華村では十五隻の磯船が流出し、内五隻は大破一隻は行方不明となる。この他鰮粕三十石、むしろ千五百枚その他漁具が流出する損害を受ける。ただでさえ苦しい漁民にとってこの被害は、まさに泣面に蜂のようなものであった。
・四月三日 函館毎日新聞主催の「道南五霊場投票」において、椴法華村は一致団結して「恵山賽の河原」の必勝を期し、十五万七千百五十六票の投票を得て第十一位を獲得する。
 
  昭和八年三月十七日 函館毎日新聞
   靈場投票が取り持つ
       擧村一致の美風
       椴法華村に意外な收獲
   亀田郡椴法華村では從來あらゆる事情から擧村一致したることなく政争その他の抗争により村治の圓満を缺くところ多かつたが今回本社の道南五靈推薦投票に際し初めて擧村一致これが投票に終始することになつた然もこの推薦運動は老若男女を問はず恵山賽の河原の必勝を期して全村殆ど擧りつつあり村有志も亦この意外なる一致團結を同村に於て見たることを村治上のため非常に喜ぶべき傾向なりとしこれを機として挙村一致の美風を益々固むべく努めることになつた。

昭和8年 恵山登山


五霊場投票 昭和8年4月 函館毎日新聞

・七月二十三日 椴法華村及び下海岸一円の長年の望みであった準地方費道函館・椴法華線が全通し、椴法華小学校において開通式が挙行された。口の悪い人はかつては椴法華村のことを「下海岸のどんづまり」とか「陸の孤島」などといっていたものであったが、遂に函館・椴法華間が自動車道路によって継がれ、以前にはとても考えることができなかった天気の悪い強風の日でも、日帰り往復が可能となった。
 またそれまで海路のみであった貨物の輸送から陸路貨物自動車による敏速な輸送が可能となった。このため、烏賊・まぐろ等の鮮魚の移出が出来るようになり、この面でも大きな利益を村にもたらすようになった。なお積雪の多い一月から四月にかけては、椴法華古武井間は山道の除雪が十分でないため、バス・トラック共に運行できなくなることが多かった。

昭和8年ころの椴法華村(島)