第一章 總則は八か條あり
一條 区域内で捕魚採藻を営むものは組合に編入(加入)することと漁業者の組織加入を義務づけた。
二條 組合は親睦を主とし助け合うもので、理由なく他人の営業を拒む弊を一掃し、魚藻の繁殖につとめ漁業の隆盛を期するものとしている。
三・四條には捕魚採藻をする者は頭取に願伺、また使用する漁具についても頭取に届出ることとしている。いわゆる、魚種による漁具の規則もおこなっている。頭取はこれらの願伺認可などすべてを帳簿に登録をして認可をしておくことに義務づけられている。
五條 漁業採藻が終業したらその取獲高を頭取に届出させている。
六條 生産(取獲)物の結束製造の規格、仕様ならびに俵函及び結束したものに生産者の名前を記入した木札を挿入することを指示している。
七條 捕魚採藻に流引網等禁止するとしている。
八條 建網のことで、割渡の位置を勝手に移動してはならないことと、拝借海面内であっても胴網より沖へ墻(かき)網をのばすことを禁止した。
第二章 鮭建網 九條から一二條まで
九條 陸より沖へ四〇〇間以内、隣との間幅を五〇〇間と定め
一〇條 碇(イカリ)、マッケ、シカリなどは終業後直ちに除去することを義務づけている。これは鰯の地曳引網操業等の障害をしてはいけないと除去させる理由を明記している。
一一條 鮭の差網が鮭の建網の碇の浮標内での操業を禁止し
一二條 浮標のない差網には他の差網が施業されても苦情はとりあげないものと、操業間の争いをなくするためには差網には必ず浮標をつけることを指示する意味をふくめている。
条文に明記しなければならないだけに、鮭の建網などの碇やマッケなどを海底に放置する例が多かったとも推量される。漁業のとりしまりは、それまでの自由奔放を漁業の入会制を改め、新しい漁業のための道徳(戒律)を確立していく役割も果たしたといえる。
第三章 鯡建網 一三條から一七條まで
一三條 陸から沖へ二〇〇間、隣接の間幅を二〇〇間として、ただし、従前海面拝借願受けたるものはこの限りにあらずとしている。
一四條 終業後の碇の除去は鮭網と同じと定め
一五條 鯡の差網は鯡の建網の外であれば差支えないが、面先より左右約三五間を距てて建網の障害にならないよう配慮すること。
一六條 鯡の差網の投入は日没前としながらも但し書きで、魚の群集したときはその限りにあらずとしている。
一七條 追鯡のため入稼は拒むことはできないが、追網入稼の差網営業者も矢張日没前に上陸することをとりきめ、網の投下する海面の組合総代人に届出ることとしている。しかし、日帰網は届出るに及ばずとしているから、かなりの自由な入会操業が認められていたのである。
第四章 鰮鱒鮪鱈鮃
一八條 鰮曳網の操業のときの魚群の発見と操業をしかけたものの優先権を記し、他人がこの魚群にみだりに入りこんで横領がましきことを禁じた。これらの紛争には近隣のもの三名以上立会して曳網もまた鯡漁と同じく日帰の網漁は他村のものでも自由に漁獲ができるとしている。地先組合の認可をうる必要はない。
一九條 鱒建網は陸地より沖出四〇〇間、その海面の幅五〇〇間の定めである。
二〇條 鱒曳網は海面の制限はいらない。地元組合総代の指揮をうける。
二一條 鮪建網場は陸地より沖出千間以内、海面の幅も千間と定め六尺をもって一間とすると明記している。
臼尻村小川漁場と臼尻村網漁場の建場紛争の裁判事件は当時の沿岸漁業者に大きな関心事であったことをこの條文は物語っている。
とかく五尺をもって一間一尋として操業していた漁業者の慣例を改めることでもあったろう。しかし、以来一〇〇年を閲した昭和五〇年代になっても建網をつくるのに一間を用い、一間を五尺として計算してきた漁業のかたくなな慣行に建網漁業の根性をうかがうことができる。
二二條 鱈鮃そのほかの雑魚は海面区域を定めず、相互に親睦漁業することを得るという公開漁業をしている。
二三條 雑魚漁操業で他人のしかけた漁具とその魚の妨害を禁じている。
第五章 昆布などの採藻のとりきめをしている。
二九條によれば、捕魚採藻のうち昆布・布海苔・煎海鼠(なまこ)(海鼠のことで煎は不要な文字)の三種に限って、収獲期日を定め正副総代よりあらかじめ全組合員に通知する。
二四條 昆布採収の期節中は採収の可否などのすべてを指揮する本船(もとぶね)を設置するということを定めている。
二五條 他地域の者でも、その所属の組合から添え状(委任と身元を証明する書付)を持参して準組合員としての資格で入稼を認められた。
二六條 日帰り採収はあらかじめ届出ると地元で三日とるうちは禁じられ、四日目からは自由であった。添え状も、地元の認可もとくに必要でなかった。
二七條 日帰り操収者は、海底の障害物の除去などの費用を添えて所属する正副総代に届出ると、入稼地の組合にあて、入稼するものの氏名と所定の負担金を送付すると日帰り操収ができた。
二八條 真昆布と汐干昆布の採収は区別されていて、汐干昆布の採収のとき真昆布をとることを禁止している。
二九條 欠
三〇條 組合総代ならびに村総代は海藻の品位と乾燥(乾上(ほしあ)げといっていた)を昆布採収期の事前に注意を徹底し、結束の前後も厳しく実地点検することが定められ、総代などの点検を拒むことはできない旨を規約に定めている。
三一條 昆布採収期終了後昆布の薄生を増殖させるため漁業の余暇をみて海底の障害物を除去したり、投石することをとりきめている。
入稼のものはこの費用として一艘一人に付一円を差し出す定めであった。
明治一八年には昆布採収の規定を詳細にとりきめ、組合規約を改正している。昆布鎌卸の日は土用入の日と予定するとし、組合取締人が事前に実入を見分してその日を定めて戸長役場を経て郡役所に届出ることとされた。
製品・結束のきまり
製品には検査済票を添付する。検査済のうえ、さらに戸長役場の検査をうけさせた。
昆布干場の境界に標柱を建立すること。
干場の修繕
三二條 布海苔の採収は必ず手(指)で摘み、刃物や貝殻などをもって濫採することを禁じた。
三三條 採収の期間外には海鼠は小さなものでも捕獲を禁じられていた。
第六章 違反処分の規定
三四條 組合規約に違反したものは六〇円以下一円以上の違約金を差し出させ、資力なき者には一日以上七日以内の出漁を差し止めるものとした。
三五條 組合規約に違反したものがいる場合は総代が事実をつまびらかに調べ、違約金を定めて戸長に具申し、戸長はこれを郡長に上申してその認可を受けて施行された。
第七章 会計及事務
三六條 差し出された違約金は戸長役場で貯蓄しておき、殖産上の費用に充当された。もっとも支出にあたっては郡長の認可を得て支出するものと定められていた。
三七條 会計の年度はすべて暦年度で立案された予算は郡長の認可をうけて施行され、漁業に従事するものは男女をとわずその種類毎に一人一件五銭をおさめて漁業鑑札をうけた。この鑑札の納付金は正副総代がその出納を明記しておく。
三八條 正副総代は毎年年末に収支明細書を漁業者に報告する。
三九條 総代は年一五円、副総代は一二円支給され、出張のときの旅費は一日五〇銭を定められていた。
四〇條 規約の改正は漁民会議で決定し、県庁の認可を得る。
四一條 総代副総代の任期は、二年とされ再選は妨げないと定めた。
漁業組合申合規則之儀ニ付上申
本年五月御廳第十五号御布達漁業組合條例ニ依リ漁業組合一同協議之上規約別紙之通リ相定履行致度候間御認可被成下度此段上申仕候也
函館縣下茅部郡尾札部村
明治十七年十月十五日 第壱組漁業総代人兼村総代
今 津 甚 蔵 印
仝副総代人兼村総代
小 板 久兵衛 印
仝副総代人同
小田原 幸 作 印
函館縣令時任為基殿
前書之通申出有之ニ付奥印之上進達候也
第四百七十七号 尾札部村戸長飯田與五左衛門
勧第四拾九号 伺之趣認可候事
明治十八年一月十四日 函館縣令時任為基 印
茅部郡第壱組尾札部村漁業申合規約
此規約ハ明治十七年本縣甲第十五号布達漁業組合條例ニ依規約スルモノニシテ此組合ニ編入漁業ヲ営ムモノハ渾テ此規約ヲ遵守シ違背スヘカラス。依テ其目ヲ定ムル左ノ如シ。
総 則 第 一 章
第壱條 組合区域内ニテ捕魚採藻ノ漁ヲ営マントスルモノハ漁業組合條例ニ依リ組合ニ編入シ成規ノ手続ヲ経テ営業スベシ。
第弐條 此組合ニ編入スルモノハ組合ノ親睦ヲ旨トシ互ニ困難ヲ救援シ無謂其営業ヲ拒絶スルノ弊ヲ一洗シ漁藻繁殖ノ点ニ注意シ各自ノ営業ヲシテ益々隆盛ナラン事勉ムベシ。
第三條 捕魚採藻ニ関スル願伺届ハ総テ組合頭取…連印スベリ。
第四條 各自ノ使用スル捕魚採藻ニ関スル器械員数代償等ハ口頭又ハ書面ヲ以テ頭取ヘ届出頭取ニ於テハ豫テ帳簿ヲ製シ明瞭ニ登録スヘシ。尤モ新調破損等モ同様取扱ナスモノトス。
第五條 各種ノ漁業採藻トモ終季ニ至ラハ其収獲高ヲ明瞭ニシ頭取ヘ届出ヘシ。
第六條 各自取獲物ハ結束製造共充分注意ヲ加へ俵函及結束中ヘ出産人名略記セル木札ヲ挿入スヘシ。
第七條 捕魚採藻ニ際シ不良ノ器具(潜水器方言流引網等ノ類)ヲ以テ漁業採藻ノ業ヲナスヘカラズ。
第八條 総テ建網ヲ以テ漁業ヲ営ムモノハ其割渡ヲ受ケタル位置外ヘ猥リニ転スヘカラズ。
但シ拝借海面内ト雖モ胴網ヨリ沖ヘ墻網ヲ付着スヘカラス。
鮭 魚 第 二 章
第九條 鮭建網ハ陸ヨリ沖ヘ(四百間以内)距幅(五百間)定ム。
但従前海面拝借ヲ受タル者ハ此限ニアラズ。
第拾條 鮭建網ニ用タル碇(方言マッケ シカリ等ノ類)終業直チニ怠タリナク取片付鰯曳網等ニ必ス障害セサルヲ要ス。
第拾一條 鮭差網ハ鮭建網碇ノ浮標内ヘ入ルヲ許サズ。
第拾二條 浮標ナキ差網ヘ他ノ差網ヲ投入セラルゝモ次シテ苦情ヲ唱フル事得ズ。
鯡 漁 第 三 章
第拾三條 鯡建網間数ハ陸ヨリ沖へ(弐百間内)距幅(弐百間)定ム。
但従前海面拝借願受ケタルモノハ此限ニアラス
第拾四條 鯡建網ニ用タル碇等ノ所置方ハ第十條ノ例に依ルベシ。
第拾五條 鯡差網場ハ建網場所ノ外差閊(ツカエ)ナシト雖モ面先ヨリ左右凡ソ(三拾五間)ヲ距リ建網ノ障害ナラサル様投入スルモノトス。
第拾六條 鯡差網ヲ海面ヘ投入スルハ必日没以前ニ限ルモノトス。
但日没以前風破ノ為メ投入スル不能ト雖モ魚ノ群集シタルトキハ本條ノ限リニアラズ。
第拾七條 鯡建網並差網トモ追鯡入稼ヲ拒ム事ヲ不得ト雖モ差網営業者ハ日没前上陸スヘシ。
但本條ノ場合ニ於テハ網投下スル地ノ組合総代人ヘ届出ヘシ尤モ日帰網ハ届出ルニ及ハズ。
鰮 鱒 鮪 鱈 鮃 第 四 章
第拾八條 鰮曳網ハ何レノ海面ニ於施行スルヲ得ルト雖モ甲船ニテ見留タル魚ヲ乙ノ船ニテ猥リニ網ヲ投下シ漁業スルヲ得ズ。
但本條ノ場合ニ於テ苦情有之節ハ其近傍ノ漁夫(船頭ヲ云フ)三名以上立會之レカ可否ヲ定ムルモノトス。尤モ日帰リハ第十七條ノ例ニ依ルベシ。
第拾九條 鱒建網ハ陸ヨリ沖ヘ(四百間)距幅(五百間)ト定ム。
但従前海面拝借ヲ受ケタルモノハ此限ニアラズ。
第弐拾條 鱒曳網ハ何レニ於投入スルモ妨ケナシト雖モ他ノ組合部内ニ於該業スルモノハ其組合総代ノ指揮ヲ受クベシ。
第廿壱條 鮪建網場ハ陸ヨリ沖へ(千間以内)距幅(千間)ト定ム。
但(六尺ヲ以壱間ト定)従前海面拝借ヲ願受タル者此限ニアラズ。
第廿弐條 鱈鮃其他雑魚ハ自他ノ組合区域ヲ不定相互ニ親睦漁業スル事得。
第廿三條 鱈鮃其他ノ雑業者ハ相互ニ他人ノ釣繩(方言配繩ヲ云フ)網等ニ妨害セサルヲ要ス。
採 藻 第 五 章
第廿四條 昆布採収ノ期節中ハ本船ヲ設置採収ノ可否ハ総テ本船ノ指揮ニ従フモノトス。
第廿五條 昆布採収ノ為メ他ノ組合ヨリ入稼ヲナスモノハ其組合総代ヨリ副翰ヲ持参スヘシ最昆布干場ヲ要スルトキハ差支ナキ様懇切ニ世話スベシ。
第廿六條 甲ノ組合ヨリ乙ノ組合区域内ヘ来リ昆布採収日帰業ヲ為サントスル者ハ別段本組合ニ編入スルヲ得ト雖モ本組合ニ於三日間採収ノ業ヲ終ラサルハ日帰業ヲ許サス尤モ其日帰業ヲナスモノハ昆布発生障害物ヲ除却スル費用トシテ(昆布厚生ノ節ハ金五拾銭 薄生ノ節ハ金四拾銭)ヲ採収一季中船壱艘ヨリ受収スルモノトス。
第廿七條 前条日帰リ業ヲナスモノハ豫メ正副総代ノ中ヘ届出正副総代ニ於テハ其採収セントスル人名等ヲ詳記シ乙ノ組合正副総代ヘ前以テ通知スベシ。最昆布発生ノ障害物ヲ除却スル費用トシテ可差出金員ハ甲ノ組合正副総代ニ於テ収受シテ乙ノ組合正副総代ノ中ヘ送付スルモノトス。
第廿八條 汐干昆布取獲スルニ當リ真昆布ヲ取獲スルヲ得ズ。
第廿九條 捕魚採藻ノ内左ノ三種ニ限リ収獲期日ヲ定メ正副総代ヨリ豫テ組合中ヘ報スルモノトス。
一昆布 一布海苔 一煎海鼠
第三拾條 組合総代及村総代ハ品位乾上ケ等ニ豫テ注意スルハ勿論且結束前後各取獲人ニ就キ実地点検スベシ。
但本條ノ場合ニ於テ取獲人ハ総代ノ点検拒ム事ヲ得ズ。
第卅壱條 毎年昆布採収ノ後漁業ノ余暇ヲ以テ昆布発生ノ障害物ヲ除却シ且該藻生殖ノ為メ海中ヘ石ヲ投入スルヲ要ス。
但他ヨリ入稼ノモノハ昆布収獲後本條ノ費用トシ採収一季中船壱艘一人ニ付(十五歳以下無料)金壱円ヲ差出スベシ。
第卅弐條 布海苔ハ必ス手ヲ以テ摘ミ刃物或ハ貝殻等ヲ以テ濫採スベカラズ。
第卅三條 煎海鼠漁ハ小ナルモノ必ス捕獲スベカラズ。
違 約 所 分 第 六 章
第卅四條 此組合規約ニ違フモノハ金六拾円以下壱円以上ノ違約金ヲ差出サシムヘシ若違約金ヲ差出難キ無資力者ハ一日以上七日以内ノ出漁ヲ差止ムベシ。
第卅五條 違約者アルトキハ総代ニ於充分審按シ違約金ヲ差出サシムルノ金額ヲ詳審シ戸長ヲ経テ郡長ノ認可ヲ受施行スルモノトス。
曾計及事務 第 七 章
第卅六條 違約徴収シタル金及昆布発生繁殖ノ為メ収受シタル金額ハ戸長役場ニ貯蓄シ置キ本村殖産上ノ費用ニ宛ツ尤モ此支出ヲ要スルトキハ郡長ノ認可ヲ経ルモノトス。
第卅七條 本組合ニ係ル諸費用ハ渾テ暦年度ノ始メニ當リ豫算ヲ製シ郡長ノ認可ヲ経テ施行スヘシ尤モ該費ノ補助トシテ漁業携帯ノ鑑札壱枚ニ付金五銭ヲ収受シ正副総代ニ於是レカ出納ヲ明瞭ニスベシ。
但漁業者ニ従事スルモノハ男女ヲ不問十五歳以上ノモノヘ其種類毎ニ下付スベシ。
第卅八條 総代ニ於ハ組合ニ係ル諸費ヲ成丈ケ節減シ毎年末取纒メ収支明細書ヲ造リ組合ニ報告スベシ。
第卅九條 正副総代ヘ為報労ト壱ケ年 正総代人金拾五円副総代人金拾弐円 を支給シ且漁業上ニ付出張之節ハ旅費トシテ一日金五拾銭ヲ支給スベシ。
第四拾條 此規約施行上差支アルトキハ當組合ノ内本籍漁民曾議決定ノ上縣廳ノ認可ヲ経テ更正スベシ。
第四拾壱條 総代及副総代ノ年限ハ満二ケ年トス満期改撰之節ハ前任ノ者
再撰スルモ妨ケナシ。
明治一八年、農商務省にはじめて水産局が設置された。これは、混迷していた国内の漁業秩序を維持するための緊急なそして大きな課題を担っての登場であった。
明治一九年に「漁業組合準則」(農商務省第七号)が制定された。その内容は、
(1)組合は「営業ノ弊害ヲ矯正シ、利益ノ増進ヲ目的」とする。
(2)「漁業ニ従事スルモノハ、適宜区画ヲ定メ組合ヲ設ケ規約ヲ作リ、管轄庁ノ認可ヲ請フ」。
(3)「捕魚採藻ノ季節」「漁具漁法及採藻ノ制限」「漁場区域」などを定めることとしている。
これらは、旧慣の漁業の自治的な権利をまず確認させることであった。そして各漁村に漁業組合を設立させて漁民と漁業を各々包括して、漁業支配の管理権をこの組合に与えて漁業秩序の維持を図ることを目的としたものであった。しかし、このことははじめから漁業の新秩序の形成を盧ることはなく、むしろ旧来の漁場の封鎖的割拠主義を法的に固定化させる役割を果たしたものとみられている。
昆布採収其他申合規約書ヘ追加之義ニ付願
客歳五月御廳甲第拾五号御布達漁業組合條例ニ依リ該組合一同協議之上規約書上申仕候處本年一月十四日附御認可相成候ニ付而本年来履行致成候處昆布製造方等之義御諭達之次第モ有之候ニ付右規約書第三拾壱條ノ次ヘ昆布採収其他別紙之條項ヲ追加曩ニ御認可相成候第六章第三拾四條中一日以上七日以内(出漁)ヲ捕魚採藻ヲ差止ムヘシト改正第三拾弐條ハ第三拾三條トナシ順次繰下ケ□行致度候間御認可被成下度此段奉願候也
函館縣茅部郡尾札部村総代並
明治十八年五月 茅部郡第壱組漁業取締 今 津 甚 蔵 印
仝
仝副取締 小田原 幸 作 印
仝
仝 小 板 久兵衛 印
函館縣令 時 任 為 基 殿
前書之通願出ニ付奥印之上進達候也
第五百廿九号 渡島國茅部郡
尾札部村戸長 飯田與五左衛門 印
勧第四二五号
書面漁業組合規約更正之儀
認可候事
明治十八年七月廿一日 函館縣令 時任 為基 印
(割印)
第三拾弐條 昆布採収及ヒ干燥製造結束検査順序
第左記之各項ニ依ルモノトスル
第一項 鎌卸之日ヲ土用入之日ト豫定ス依而漁業組合取締人ニ於テハ前以而実入ヲ査見シ鎌卸之日ヲ定メ組内ヘ報告シ(スルモノトス)其旨戸長役場ヲ経テ郡役所ヘ届出スモノトス
但漁業組合取締人ヨリ報告以前ハ鎌卸不相成モノトス
第二項 実入不充分ナル昆布赤葉等ヲ混入結束ヲナスヘカラス故ニ悪葉ハ勿論其他不充分品ハ取獲之際海面ニ於而除去シ乾燥之手数ヲ省クヘシ
但実入不充分ナル昆布ハ生育方ニ注意シ充分之実入得而取獲スヘシ
第三項 昆布干場ハ必ス其区域ヲ正□比隣及表裏ノ境界ヲ判明スル為メ各自處有拝借地江左記雛形之標杭ヲ建立スルモノトス
但昆布収獲中他ヨリ一時ヲ入稼之モノ本文之例ニ依ルヘシ
四寸 丈六尺
第四項 総而昆布干場ハ其期節前又ハ営業中ト雖モ必ス相当之修繕ヲ加フヘシ
甲半面
[資料(一部)]
乙半面
[資料(一部)]
第五項 毎年鎌卸前ハ勿論営業中ト雖モ漁業取締人ニ於テ相立會之上各自處有及ヒ拝借之干場ヲ點検シ乾燥之上不適当ト認ムル場所ハ溝渠ヲ疏通シ砂石ヲ埋ムル等修繕セシムルモノトス
第六項 前條處有及ヒ拝借主ニ於テハ修繕済之上ハ取締人江申出再ヒ點検ヲ受クヘシ
第七項 昆布ハ必ス晴天三日以上日光ニ乾燥スルモノトス
但其上艸上等□而湿気アル土地ニテ乾燥スヘカラス
第八項 乾燥中之昆布ハ日没後必ス納屋ニ納ムヘシ
第九項 乾了之昆布結束前必ス漁業取締人ニ申出品位ノ點検ヲ受ケ然ル後結束スルモノトス
第十項 乾了前降雨ニ逢ヒ又ハ数日間曇天之為メ湿気ヲ帯ヒタルト認ムルトキハ漁業取締人ノ検査ヲ受ケ良否ヲ区別シ善悪混同之結束ヲナサヽルモノトス
第十一項 元揃昆布壱把目形弐貫目花折昆布壱把之目形壱貫目ト定ム
第十二項 結束後他ニ輸出セントスルトキハ漁業取締人江申出品位之良否及ヒ結束乾燥方等ノ検査ヲ受ケタル後輸出スヘシ
第十三項 昆布製造ノ精良ヲ証明スル為メ第十二項之検査品ヘ左記雛形之証票ヲ壱把毎ニ挿入スルモノトス
但証票ナキ昆布ハ精否ノ検査未済ノモノニ付輸出販賣スルヲ得ス
上等(中等)国郡村番地出産人
○ 漁業組合取締人 何 之 某 印
検査済印
第十四項 前項検査済之上ハ戸長役場ヘ申出尚又検査ヲ乞フヘシ若シ此場合ニ於而粗悪品アル事見出シタルトキハ輸出差止ムルカ若クハ結束ヲ解キ再撰セシムル事アルヘシ
第十五項 昆布採収ニ使用スル器械及ヒ船具ニ至ルマテ其便否良法ヲ考□シ或ハ漁業取締人ニ於テ障害アル器具ト見認ルトキハ収獲人ニ示諭シテ改良スヘシ