町人が藩主の行列に出会った際のとるべき態度については既述したので(本章第一節五(一)参照)、町人と藩士の場合を述べることにしたい。
両者は城下で出会う場合が多かったと思われるが、その際に町人は藩士に対して「……様」と申し上げて敬意を表し、「……殿」というのは無礼であった。路上で出会った際にも跪(ひざまず)いて挨拶をしなければならなかったのである(「国日記」延宝三年二月十六日条)。
また藩士が道を通るときに、町人が店頭で腰をかけたり、横になっているなどの無作法な態度を慎むこと(同前元禄十五年七月八日条)、店頭で煙管(きせる)や楊枝(ようじ)をくわえ、あるいは頭巾(ずきん)をかぶって立腰でいるような態度を禁じていることが知られる(同前宝暦二年七月七日条)。
このような礼儀作法についての規制が、江戸時代を通じて幕末に至るまで出されていたのである。