陸奥立憲帝政党の結成

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明治十六年(一八八三)一月の『東京日日新聞』は弘前の反自由民権グループの動きと帝政党結成について次のように報じている。
此度津軽弘前の有志山崎清良津軽平八郎・同尚志・同八十五郎・小林忠右衛門菊池幸八川越石太郎七戸仲行笹森儀助等の諸氏は彼(かの)詭激(きげき)論者の為に我国体を過られん事を憂へ、慷慨忠憤の士を団結し大に漸進の主義を拡張せんとて、同地に於て陸奥帝政党を組織せられしに、之に同盟なす者恰も響の応ずるが如く也と云ふ。今其盟約書を得たれば左に記せり。
   陸奥立憲帝政党盟約
 我陸奥立憲帝政党ハ我文武叡哲ナル皇帝陛下ノ衆庶ニ諭(さと)サセ給ヒシ大御詔ヲ奉戴シ、旧ニ泥(なじ)ミ故ニ慣ルル事莫(な)ク進ムニ軽ク為スニ急ナルコト莫ク、恒ニ理論ト秩序ノ併行ヲ求メ、以テ国安ヲ保維シ、以テ改進ヲ冀図セントス、依テ左ニ我党ノ盟約ヲ掲ゲ、同志同感ノ士君子ニ告グ、冀(ねがわ)クハ憤起結合共ニ此主義ヲ拡張セン事ヲ、
第一章(略)
第二章 我党ハ日本帝国ノ臣民ニシテ我党ト主義ヲ共ニシ、左ノ冀望ヲ有スル者ヲ団結シ、以テ我党ノ目的ヲ達スベシ

 一、皇統一系万世不易ノ国体ヲ保チ、以テ皇室ノ尊栄ヲ増進シ人民ノ康福権利ヲ鞏固ナラシムル事

 一、智識ヲ練磨シ財産ヲ興隆シ漸々内治ノ改良ヲ謀リ、国権ヲ拡張スル事

 一、我日本帝国ノ主権ハ聖天子ノ独リ総攬シ給フ所ナレバ我党ハ、明治十四年十月十二日ノ聖勅ヲ遵奉シ、敢テ欽定憲法ノ則ニ違ハザル事

 一、代議人選挙ノ分限資格国会議員陸海軍人司法官ノ権限ハ総テ憲法ノ制ヲ遵法スベキ事

 一、理財ハ交換紙幣ノ主義ヲ持スル事

 この弘前の陸奥立憲帝政党について、御用新聞と言われる『東京日日新聞』は、たちどころに同志が雲集しているように報じたが、実態は違っている。