陸軍特別大演習の準備と開催

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弘前で開催された大演習は、地元弘前市はもちろん青森県全体でも大いに期待されていた。大演習の実施に関しては、県民総出で大感激する様相が強かった。第一次世界大戦の影響から、今回の大演習が非常に重要であり、技術的にも実験的な意義があった。大戦ではヨーロッパ各国とも最新式の設備を導入し、実戦でもそれを活用していた。すでに日露戦争当時から通信設備向上の必要性を日本の軍当局では実感していた。そのため今回の演習で、新しい軍事技術を導入し、実践的に活用しなければならないとの指摘が新聞各紙にも掲載されていた。第一次世界大戦が総力戦となった以上、弘前での大演習も総力戦に対応した演習にせよとの鋭い指摘である。
 弘前で実施された陸軍特別大演習は、近代総力戦を意識したものとなった。十月二十日、大演習は南北に別れて開始された。新聞各紙が指摘したように、この大演習では飛行機はもちろん、偵察用の飛行船が活用されたり、通信設備の向上を狙った作戦も用意されるなど、第一次世界大戦の影響を意識したものとなった。演習を見物する地元の人々にとっても同じだった。とくに飛行機を使った演習は地元民にとっても興味深かったらしく、見物人は物珍しく演習を見つめていた。けれども当時の飛行機に関する日本の技術は未熟な段階にあった。見物人の間に飛行機が墜落して死傷者が出るなど、新しい時代を予期した大演習にもと陰があった。

写真157 通信設備を試す陸軍兵


写真158 飛行機を使った演習