弘前で実施された陸軍特別大演習は、近代総力戦を意識したものとなった。十月二十日、大演習は南北に別れて開始された。新聞各紙が指摘したように、この大演習では飛行機はもちろん、偵察用の飛行船が活用されたり、通信設備の向上を狙った作戦も用意されるなど、第一次世界大戦の影響を意識したものとなった。演習を見物する地元の人々にとっても同じだった。とくに飛行機を使った演習は地元民にとっても興味深かったらしく、見物人は物珍しく演習を見つめていた。けれども当時の飛行機に関する日本の技術は未熟な段階にあった。見物人の間に飛行機が墜落して死傷者が出るなど、新しい時代を予期した大演習にも光と陰があった。
写真157 通信設備を試す陸軍兵
写真158 飛行機を使った演習