初めてストーブを使用

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十一年(一九二二)十一月下旬、弘前市各小学校で初めて薪ストーブが使用された。これまで各校とも教室に火鉢二個を置いたが、ストーブの使用で教室はこれまでと比較にならぬほど暖かくなり、冬期の学習も楽になった。もっとも十一年度に設置されたストーブは各小学校とも一個だけで、これは試験的に備え付けたものである。しかし、具合がよいと評判になり、十二年度から本格的に使用された。ストーブ使用に関して『東奥日報』は「十二年度現在、高小六、朝陽九、時敏九、第二大成九、和徳六、第一大成六、城西六を備え付け、十三年度に於て更に朝陽、時敏、第二大成は六個宛、高小、和徳、第一大成、城西は四個宛、此の予算千三百六十円を以て計画する予定だが、尚ほ明年度に於て二個乃至三個の増設で満足する筈である」(大正十三年十月四日付)と報道している。記事から本市小学校ストーブが備え付けられた経緯がわかるであろう。
 従来、日本の小学校教育は「鍛える教育」の実践だったため、児童の厚生施設には無頓着であった。寒中寒さを我慢するところに真の学習があるなどと称し、暖房設備など顧慮するところがなかった。そのため、虚弱な児童は厳冬期には長期欠席することが多かった。ストーブの使用は長欠児童をなくしたうえ、冬期学習の進捗向上を促した功績があった。