写真28 軍人援護の回覧板
けれども軍人援護事業が銃後奉公会をはじめ、民間団体の協力を得て行われたことも事実である。昭和十八年四月九日、県内政部は軍人援護精神昂揚運動として巡回映写会を実施している。これには地元の銃後奉公会や地方事務所だけでなく、社団法人映画配給社と毎日新聞社が主催し軍事保護院が後援した。映画配給社による「移動映写」で映写班が組織され各地域を回った。毎日新聞社のイベントでもあったのだが、県当局は軍人援護政策として活用した。入場料は無料だが、必ず出征軍人宛の慰問文を携行することが義務づけられた。慰問文は県がとりまとめ、軍部に献納された。軍と自治体当局と民間企業の共同事業による軍人援護活動の一端が理解できよう。
弘前市での巡回映写会は四月二十九日に開催された。上映映画は「マレー戦記」、「空の神兵」、「ハワイ・マレー沖海戦」、「ビルマ戦記」など、戦記ものが多かった。この事業自体は、軍人家庭の経済的援助という類ではなく、娯楽面ないし精神的な側面からの援護であった。精神面を強調することだけが精いっぱいの援護策だったともいえよう。