県内務部農政課による『青森県農家負債状況調』(昭和七年十一月)によると中津軽郡農家の一戸当たり負債額は五〇〇円から一〇〇〇円程度で、同調査によると県内の平均は九一三円であった(表14参照)。ちなみに弘前市の農家戸数は一六〇戸、負債農家は八一戸で、一戸当たり総負債額は一五六〇円とやや多くなっている(同前)。
経済更生計画は全村ぐるみで行われ、同計画に基づいて、新和村、船沢村、豊田村、和徳村、堀越村、大浦村、高杉村、東目屋村、藤代村、石川町が「計画指定町村」に指定され、全町村民を挙げて隣保共助の組織化を要求された。東目屋村では、経済更生計画を樹立し、特に「中堅青年養成」「産業組合ヲ拡充活用」「負債整理組合ヲ設立」が緊急課題に挙げられた。また、計画の実施には、「各部落ニ連帯責任ヲ負う実行組合ヲ設置」して、「五人組制度」のような実行班を末端に置いて組織することが強調された(「東目屋村経済更生計画と実行費」、資料近・現代2No.二二七)。
表14 中津軽郡町別農家負債状況 | ||||
町村別 | 総戸数 | 農家戸数(a) | 農家総負債額(b) | 農家一戸当総負債額b / a |
戸 | 戸 | 円 | 円 | |
清水村 | 655 | 605 | 461,017 | 762 |
和徳村 | 1,462 | 617 | 396,737 | 643 |
豊田村 | 728 | 492 | 380,496 | 773 |
堀越村 | 655 | 413 | 219,603 | 531 |
千年村 | 774 | 599 | 446,258 | 745 |
駒越村 | 591 | 550 | 283,538 | 516 |
岩木村 | 631 | 610 | 396,640 | 650 |
相馬村 | 635 | 590 | 181,370 | 307 |
東目屋村 | 506 | 441 | 327,443 | 743 |
西目屋村 | 464 | 376 | 204,953 | 545 |
藤代村 | 927 | 734 | 565,578 | 771 |
新和村 | 804 | 596 | 714,389 | 1,199 |
大浦村 | 516 | 423 | 241,245 | 570 |
船沢村 | 524 | 515 | 274,212 | 532 |
高杉村 | 581 | 490 | 444,875 | 908 |
裾野村 | 674 | 613 | 544,656 | 889 |
青森県内務部農政課『青森県農家負債状況調』昭和7年より作成 |
経済更生計画は全村ぐるみで行われ、同計画に基づいて、新和村、船沢村、豊田村、和徳村、堀越村、大浦村、高杉村、東目屋村、藤代村、石川町が「計画指定町村」に指定され、全町村民を挙げて隣保共助の組織化を要求された。東目屋村では、経済更生計画を樹立し、特に「中堅青年養成」「産業組合ヲ拡充活用」「負債整理組合ヲ設立」が緊急課題に挙げられた。また、計画の実施には、「各部落ニ連帯責任ヲ負フ実行組合ヲ設置」して、「五人組制度」のような実行班を末端に置いて組織することが強調された(「東目屋村経済更生計画と実行費」、資料近・現代2No.二二七)。
各町村においても町村長を委員長とする経済更生委員会が組織され、これに役場、農会、産業組合、学校、婦人会、青年団、農事実行組合が縦の組織を作り、末端では農家五人組を単位とし、生産から生活までの規制を行った。この組織化は戦時動員体制の構築に利用され、このような体制の構築は戦時体制の社会的基盤を補強するものとなり、総力戦体制の形成につながるものであった(同前)。
さらに、更生計画では、副業の改良増殖が奨励されたために、現金収入の期待されるりんご栽培を行う農家数は増加した。