小野議員の発言は、弘前市が学都として発展するほか道はないことを顕著に示していた。それは次の発言からも理解できよう。
商業都市、政治都市としての青森市、漁港、貿易港、工業都市としての八戸市はそれぞれ洋々たる前途を有するに対し生産都市としての実力と条件を欠く我が弘前市は総(すべ)ゆる学徒、文化都市たることが唯一の活路であり、これを通じて将来の発展を図る以外打開の途(みち)がない現状におかれて居るのであります。
小野議員は、この緊急動議を締めくくるにあたって、大学設置に要する地元負担の創設費を捻出するために「県の力と県に主導して頂く他に途はありません」と結論づけた。要するに県が主体となった事業であるがゆえに、県が「弘前大学のために約束した責任を一刻も早く果」たすことを県知事に陳情せよというのである。そしてこの緊急動議は満場一致で可決された。弘前市の危機感も、結果的には県に資金を依存せざるを得ないという点に集約されてしまったのである。