旧正月売り出しの廃止

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高度経済成長の開始や市民の意識の変化は、商店街の売り出し方法を変化させた。特に旧正月売り出しは廃止される傾向が明白になった。これは生活の合理化を提唱する新生活運動とも結びついていた。この点につき、『弘前商工会議所会報』は次のように説明している。
弘前中央公民舘の音頭によって、新正月一本化の運動が活発に行われている。新生活運動は、お互の生活を便利で都合のよいように改めて行くことにあるのであるから、まことに結構なことで、吾々も敢て反対する理由もあるわけでないので、弘前商工会議所も亦その実施団体に名を連ねた次第である。ただ長年の習であった旧正の売出しを中止するというようなことにでもなれば、異論の出ないことはないでもないと思えるが、絶対に旧正売出しを中止せよと強要していない。旧正景品付大売出しというような、キャッチフレーズには、最早昔日の郷愁めいたものはあっても、実際には旧正商は、年間最大の期待を寄せ得られるところでなくなっている、ことに年中何等かの形で景品付販売がくりかえされている今日、購買層が旧正のマコ(景品付)商に特別の魅力も興味もない点から見て、習しだからとて軒並みに旗をおしたてて、店がガランドウになっている馬鹿々々しさは、よした方がよいと思う。然し旧正のこの頃の人出のために斬新な計画があってもよい。弘前洋装店会(市内有名婦人服生地販売店八店で組織)では、従来の旧正売出し宣伝を排し、春の新柄展示売出しを行うことにきめたようである。最近この業種は、夏物は五月上旬に、秋冬物は八月に、春物は一月早々から二月にかけて展示、三月に入ると春物の縫製に手が廻らないというのが現状である。斬新な春物の宣伝時に、使い古した旧正大景品付売出しでもないでしょうという言分である。たしかに方法としては面白いと思う。旧正の神事的行事も次第に形式化し、或は失われ、農閑期のレクレーションの面が大きくなっているが、これも若い層は都市の娯楽盛り場、或は商店街に求めるようになっているのであるから、商店街の飾りつけも、売出し宣伝方法もこれに充分応えるようにならなければならないと思う。
(『弘前商工会議所会報』二三)

 ここに記されているように、旧正月売り出しに見られる伝統的な販売方法が改められ、春物、夏物、秋冬物の売り出しなど、季節に応じた売り出しが隆盛になる傾向が現れ始めた。また、景品付きの販売方法が、伝統的に行われていたが、この方法が行き詰まってきたのである。

写真161 昭和30年代の土手町商店街