金属団地の建設

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弘前市は、昭和三十八年(一九六三)、低開発地域工業発展促進法の指定を受け、旧条例を全部改正して新たな工場設置奨励条例を制定した。同法は、投資額一千万円以上で、従業員二〇人以上の工場が新設、拡充した場合には、三年間固定資産税を全額免除し、国、県の税も減免されるという主旨であった。弘前市は、その前年に設立された金属工業センター協同組合工場の集団化事業がこの法律の適用条件に厳密には当たらない事例であることを知った上で同趣旨の税額優遇を行うことにした。この点は青森県も同意した。こうして税制上の優遇措置を伴って金属団地の工場建設が始まった。一連の経過は次のとおりである。
金属工業センター協組設立総会を開く 昭和三十七年六月九日、設立同意者全員出席し組合創立総会を開き、組合定款第一年度事業計画及び収支予算、役員の選任等、組合運営に必要な諸事項を審議決定した。

集団化事業計画の完成 昭和三十七年六月九日、組合工場等集団化計画について、組合設立発起と同時に諸種検討していたが、これを創立総会の議決を経て昭和三十八年度助成団地としての指定を得るため、県知事に提出した。

組合設立認可される 昭和三十七年八月二十七日、指令第五七九二号を以って組合設立が認可された。

組合設立登記 昭和三十七年八月二十八日、中小企業協同組合法第九三条の規定によって法務局に組合設立登記を行った。

集団化用地買売契約 昭和三十七年十月十七日、弘前市長他土地所有者と集団化用地の売買契約を完了した。

助成団地として指定決定 昭和三十八年六月二十五日、通産省中小企業庁より、昭和三十八年度助成団地として指定された。

集団化地鎮祭 昭和三十八年七月二十日、集団化用地現場に各関係者の参列を得、地鎮祭が行われた。

工場、共同施設の建設開始 昭和三十八年十一月一日、組合員工場一〇工場及び共同加工場一工場、共同アパート六戸建二棟、独身寮(三二人収容)一棟の建設工事に着手した。

計画第一年度集団化事業助成決定 昭和三十九年三月三十一日、県知事より、計画第一年度昭和三十八年度分工場集団化事業助成額が決定された。

操業式の挙行 昭和三十九年五月十二日、第一期工事の完了に伴い、中小企業庁長官を始め関係各位の参列を得て操業式を挙行し、操業を開始した。

団地用地の登記完了 昭和三十九年七月十日、青森法務局弘前支局に申請していた用地の名儀変更及び合筆、分筆等の登記が完了した。

計画第二年度集団化事業助成決定 昭和三十九年十二月十八日、県知事より、計画第二年度、昭和三十九年度分の工場集団化事業助成額が決定、交付された。

第二期工事の完成 昭和四十年三月~六月、第二年度計画の組合員工場新設二工場、増設六工場、共同アパート五棟(二四戸)、独身寮(三二人収容)一棟、共同加工場の増設が完成した。

計画第三年度集団化事業助成決定 昭和四十一年二月九日、計画第三年度、昭和四十年度分の工場集団化事業助成額が決定、交付された。

第三期工事の完成 第三年度計画の新設七工場及び増設三工場が昭和四十一年三月を以って完成し、三ヶ年計画を終了する。

(前掲『弘前市における商工業の現状と将来』)

このように、金属団地の建設は順調に行われた。その組織、目的は次のとおりである。
 弘前金属工業センター協同組合の組織
 設立の趣旨 本組合は、組合員の相互扶助の精神に基づき、工場団地を形成して組合員のために必要な共同事業を行い、もって組合員の自主的な経済活動を促進し、かつ、その経済的地位の向上を図ることを目的として設立された。

 設立年月日 昭和三十七年八月二十八日
 出資口数及び払込済出資金額 一口一万円 三八〇口 総額三八〇万円
 組合員数  一九名
 組合の行う事業 1、組合員の用に供する土地の取得および造成
2、組合員の用に供する建物の建設および管理
3、組合員の用に供する道路、給排水施設、電力、ガス、電話の設置および管理
4、組合員の取扱品(生産用材料を含む)の共同生産
5、組合員の取扱品の共同加工
6、組合員の取扱品の共同販売
7、組合員の取扱品の共同購買
8、組合員の取扱品の共同保管
9、組合員の取扱品の共同運送
10、組合員の取扱品の検査
11、組合員の取扱品の販売価格の調整、その他の事業に関する協定
12、組合員の従業員の最低賃金に関する協定、その他組合員の事業に関する協定
13、組合員に対する事業資金の貸付(手形割引を含む)および組合員のためにするその借入
14、商工組合中央金庫、銀行、信用金庫、信用組合、その他組合員の取引金融機関の委任をうけてする組合員に対するその債権の取立て

15、組合員の経済的地位向上のためにする団体協約の締結
16、組合員の事業に関する経営および技術の改善向上による生産性の向上または組合事業に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供

(同前)

 金属団地は弘前市小沢大開(現金属町)に建設された。昭和四十二年時点までで、参加企業は一九社であり、その業種別内訳は鋳造業二、機械器具修理五、電気器具製造業一、鉄骨建築業八、自動車整備二、土建業一であり、形態別では株式会社四、有限会社二、個人会社一三であった。会社名と従業員数は表37のとおりである。

写真164 金属団地

表37 事業所別労務事情調査表昭和42年1月現在
区分従業員数1日の労働時間賃金額賃金支払条件一ヶ月の休日日数年次有給休暇日数労働災害発生件数就業規則労働組合労働協約給与規定社会保険加入退職金制度事業内職業訓練定期健診労働者住宅
 会社独自中退法
事業所名平均賃金(円)初任給(円)月給日給歩合健保失保厚年労災
外崎鋼鉄(株)394438.521,500中卒430 268         
商卒550
東和鉄材(株)5510659.221,67011,400 468         
16,000
照井鉄工所9098.521,000430  263         
高橋鉄工所240249.319,800430  265         
城西熔接工業14014920,60011,200 263         
15,000
(株)佐藤鉄工所18119819,135430  460         
照井境鉄工所8088660430  460         
佐藤製作所101842,000   470         
工藤熔接工場9098800430  460         
550
水木鉄工所14115824,000430 460         
16,000
村田熔接工場121139.725,33012,000 380         
16,000
一戸製作所2028635430 460         
渡辺鉄工所718817,800430  360         
皆川自動車ボデー808918,000430 260         
製作所131148.822,000  260         
皆川自動車整備15015822,53011,400  4150         
15,000
田村製作所9098.526,000500 264         
600
船水鋳造所6068.523,000   260         
工藤鋳造所808825,000   260         
合計27119290   1117    145 19 191091919191931614511819 19 
前掲『弘前市における商工業の現状と将来』