音江別川層は音江別川流域のみに分布している。基底には安山岩礫層(層厚約二メートル)があり、その上位に、泥炭をはさむ青灰色シルト層・砂層・礫と砂互層、そして最上部に泥炭をはさむシルト層が累重している。層厚は全体で約三〇メートルである。
下位の下野幌層や裏の沢層が傾斜しているのに対し、この地層は水平に堆積している。下野幌層との境界は明瞭な傾斜不整合(*)である。このことは、下野幌層の堆積区域が陸化し、浸蝕された後、再び海におおわれ、そこに新しくこの地層が堆積したことを物語るものである。つまり、音江別川層は下野幌層を切り込んだ谷を埋めるような形で堆積しているのである(図4)。音江別川層の基底を追跡すると、もっとも高い場所で標高四〇メートルくらいである。したがって、当時の海水面は現在より、少なくとも、四〇メートルは高かったといえるのである。
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図-4 音江別川層と下野幌層の不整合 |
海水面が高くなる原因は、気候の温暖化によって大陸をおおっていた膨大な氷が溶けて海に流入したことによる。だとすると、音江別川層は中期更新世の中期(約四〇万年前~三〇万年前)の温暖期の堆積物といえるのである。音江別川層からは多くの貝化石が産出するが、そのなかに、現在の北海道近海には生息しない暖流系貝類の化石がかなり含まれていることによっても、そのことが裏付けられている(後述)。
竹山礫層は野幌丘陵でいちばん高い場所、広島町竹山(標高一一六メートル)付近に分布する、安山岩礫を主とした礫層である。下位の音江別川層を不整合におおっている。
この礫層の生成過程については明らかでないが、おそらく、音江別川層堆積後の寒冷気候のもとで(後述)、山地で生成された多量の岩屑が河川で運搬され、氾らん原堆積物となって残存したものであろう。
*傾斜不整合(けいしゃふせいごう) 上位層の傾斜と下位層のそれとが異なる不整合。つまり、上位層の堆積前に、下位層が地殻変動をうけて変形したことを示す。