石狩土人への申渡 |
[請負人代支配人]へ |
漁業之暇有之節ハ、追々農業筋心得テ精いだせ、依テ鍬一挺宛為取遣ス。 下札此処役土人 |
右之通役土人へ御渡置候間、得其意漁業差障(さしさわり)不相成様繰合遣シ、雑穀作方等教導いたすべし。尤小前土人共も追々耕作筋手馴候様仕向遣セ。 (石狩土人申渡) |
其方共義、兼テ被仰出御趣意ニ付、漁業ノ妨(さまたげ)不相成様開墾等出精致ス、右ニ付鍬一挺ツヽ為取遣ス。 (入北記) |
以上の二種の申渡しが残っている。これらによると、まず漁業の差し障り妨げにならない、漁業の合い間のいわゆる「漁間農業(ぎょかんのうぎょう)」が志向されていた。そして乙名たちがまず率先しておこない、漸次、一般へも普及をはかるとともに、農業指導も支配人たちへ期待されていた。従来、アイヌが農業をおこなうことは、請負人の利益に反し、交易や漁業労働力の減少が予想されるので、請負人側で禁止してきた。その点で農業奨励への政策転換は、画期的なものであったが、充分な基礎がないままに立案したために、成果をみることは少なかった。