ビューア該当ページ

大正期の教派神道

1115 ~ 1117 / 1147ページ
 大正十年の教会は表6①②の通り諸教会が八カ所、天理教が一〇カ所であった。金光教北海教会は教会長が御船八百重から八年二月に西村務道に引き継がれ、六月十六日に札幌教会と名称を変更し、信徒組織として婦人令徳会(大8・4)、青年ポプラ会(大10・1)、少年修養会(大12・5)を創設している(金光教北海道布教百年史)。黒住教札幌教会所は、大正二年二月に北三条西一丁目へ移転し、「教勢は益々盛になる」も所長の後藤磯二が教会本部に帰任したことが契機となって教会所を失い、一時退転に向かうが、五年八月に就任した後藤大吉の尽力により、南二条東四丁目に教会所を再建することになる。そして十年八月に教会所の増築を図るようになる。その折の「趣意書」には以下のように述べられている(黒住教札幌教会所七拾年史)。
 我黒住教ハ天祖天照大御神ヲ主斎神ト仰ギ奉リ専ラ天照太(ママ)神ノ大道ヲ宣布スル宗教ニシテ他ノ宗教トハ多少其ノ趣ヲ異ニシ国体擁護、国威宣揚上必要ナルコト今更喋々ヲ要セザルナリ。
 今ヤ外来思想ノ為メ我国民ハ正ニ動揺セントシツツアリ。豈危急存亡、憂慮措ク能ハザル秋(とき)ナラズヤ。
 サレバ本教ノ如キ国体ト密接ノ関係ヲ有スル宗教ハ、津々浦々ニ至ルマデ益々其ノ機関ヲ完成シ布教宣伝ヲ盛大ニスルハ目下ノ急務ナリ。然ルニ我本道十一州ノ首都タル札幌区ニ於テスラ教会所トシテ見ルニ足ルベキモノ無キハ誠ニ遺憾至極ナリ。依テ我等ハ今般別紙設計図〔割愛〕ノ通リ一教会所ヲ新築シ国体擁護、国威宣揚ニ努メ以テ皇恩ノ万分ノ一ニ報イ奉ラントス。

表-6① 神道教会所一覧-諸教派- (大10)
教会名 所在地 創設 信徒数
大成教蓮門教会本院 南2東1 明20. 7 324戸 1,286人
金光教札幌教会所 南6西2 明35.10  - 800
神道北海道 禊教会所 南7西1 明42. 9 740 4,376
御嶽教国光教会本部 北29西7 明43. 8 795 1,173
 同 三気太教会 南6東1 明44. 6 700 738
黒住教札幌教会所 南2東4 明44. 4 50 196
神道神明教会 北15西4 大 1 . 9 360 390
神道大国教会 中島遊園地 大 5 .10 350 810

表-6② 神道教会所一覧-天理教 (大10)
教会名 所在地 創設 信徒数
水口大教会佐野原分教会上川支教会北都宣教所 北8東2 明40. 6 185戸 1,032人
敷島大教会北海支教会 北3西13 明41. 2 150 742
  同    同  北道宣教所 北5西14 明41. 1 113 409
  同    同  北海宣教所 豊平町 明42. 6
中河大教会神川分教会北養宣教所 南4西6 明42. 6 123 556
高安大教会洲本分教会統北宣教所 北1東4 明42. 7 205 300
叡山大教会桃園支教会北央宣教所 山鼻町 明44. 1 130 502
南海大教会雨竜分教会豊平宣教所 豊平町 明44.10 83 303
兵神大教会夕張分教会長沼宣教所 山鼻町 大 1 . 9 156 558
新潟分教会北宝宣教所 南7西1 大 3 . 1 80 427
札幌市統計一班』(大11)より作成。

 ここでは「国体擁護、国威宣揚」の教化のことが強調されており、教派神道も神社神道、仏教などと同様に国民教化の役割を積極的に担当していくようになる(教会所の増築は十一年八月に完成)。
 そのことは、十四年八月三十日に札幌市で開催となった第五回全国神道各派聯合大会によくみられる。神道管長の神埼一作の「所感」によると、神道一三派は混沌としてきた思想界、労働問題・小作争議が頻発する社会に対して「精神作興の御詔書の聖旨を普及徹底せしむる事」としており、国民教化を通して教勢を拡大することが課題とされていた(北タイ 大14・8・31)。