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市の統轄・代表

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 市制にもとづき札幌市に市長を置き、市を統轄し代表するものとされた。市長が担当する事務の概目として、市会や参事会に議案を発しその議決を執行する権限のほか、財産及び営造物の管理、収支命令及び会計監督、証書及び公文書類の保管、市税使用料等の賦課徴収、その他法令による事務処理があげられるが、これはあくまでも概目であり、市を統轄し代表する事務の一切が市長の職務権限である。この点で区制時の区長は統轄のみで、代表としての権限を有していなかったのと違いがある。
 昭和四年(一九二九)の市制改正により、市会権限の一部を市長に委任する途が開かれ、選挙人名簿の異議決定名簿修正も市長が行うこととなり、さらに十八年改正では、各種施策の総合的運営を図るために必要と認めるときは、市内の団体に指示を行う権限も市長に与えられ、ますます市長の立場は強化されたのである。
 区長の任期は六年だったが市長は四年で、その選任は当初区制同様に「内務大臣ハ市会ヲシテ市長候補者三人ヲ選挙推薦セシメ 上奏裁可ヲ請フヘシ」と決められ、初代札幌市長はこれによった。大正十五年の市制改正で、市長は単に市会において選挙し決定できるようになり、初代市長再任からこの方法をとる。しかし昭和十八年の改正で、再び市会から内務大臣への候補推薦と勅裁が必要となり、四代目市長はこれによった。いずれも市民の直接選挙による市長選出はこの間実施されなかったのである。
 市制施行からのち太平洋戦争敗戦までに、表2のように四人の札幌市長が誕生した。再任、再々任を含めて難産のことが多く、その間市長不在時は主に助役が市長代理をつとめた。区長とくらべ再任、再々任者が多いことを特徴としてあげることができよう。しかし、四人とも市外からのいわゆる移入市長で占められ、市民からの選任を主張する人たちと毎回対立がくり返された。したがって区制期から通して地元派が優位を占めたのは、大正二年阿部宇之八区長の実現をもって終わり、以後移入派が大勢を制しつづけた。そこに、自治の拡大を求め市制施行にこぎつけた世論の限界を見ることができる。
表-2 札幌市長・同代理一覧
職名氏名就任年月日退任年月日備考
臨時代理前田宇治郎大11. 8 . 1 大11.12. 2 前区助役
職務管掌馬場義也 11.12. 2  12. 2 .12 道庁理事官
市長(初代)高岡直吉12. 2.13 
昭2 . 2 . 3 昭2 .12.15 再任
代理増田彰 2 .12.16  2 .12.18 助役
市長(2代)橋本正治 2 .12.19 
 6 .12.19 再任
10.12.19  12. 5 .26 再々任
代理伊沢広曹 12. 5 .27  12. 7 .16 助役
市長(3代)三沢寛一 12. 7 .17 
 16. 7 .17  20. 7 .16 再任
代理平佐武美 20. 7 .17  20. 8 .13 助役
市長(4代)上原六郎20. 8 .14 21.11.12 
※大正10年12月29日より継続