市長が嘱託した常会委員は、連合公区長一六人のほか市会正副議長、議員会幹事、学識経験者等四七人で、市長が会議の議長となり統理する市長の諮問機関としての性格を持ったが、当初から市会権限との調整が問題視された。札幌市には古くから土木委員会、水道電業委員会、財政調査委員会、体育委員会等議会と関わる各種委員会があり、内務省訓令ではこれらを統合して市常会と関連を持たせるよう指示していた。さらに、道庁は衛生組合、道路保護組合、火災予防組合、銃後奉公会等を廃止し、その業務を町内会(公区)が肩代わりするよう求めており、札幌市が公区を設置する際、市会は「既設自治組合等ノ関係ニ稽ミ之レガ重複摩擦ヲ避ケ順次之等ヲ融合一体化トナス様」建議していたのである(市会関係書類 昭15)。市では「種々特別な目的の下に組織せられたる地域を基礎とした団体がありまして……将来なるべく速に之を統合して、公区聯合公区に帰一せしめ」(昭15・2・1 市告諭第一号)ようと考えていたので、内務省・道庁の方針に沿って、従来の各種委員会は市常設委員規程に統一し、各地区にある諸組合は、聯合公区に部、公区に係を置いて、七五火災予防組合、五〇衛生組合、一六銃後奉公会を統合吸収し、聯合公区・公区をしてその実施機関とした。
市常会の開催状況を見ると、十六年中に一三回(日数一三日、協議事項三八件)、十七年は一二回(一二日、一六件)であるが、市長が市常会を活用すればするほど、市会は市常会を白眼視する傾向が強まったという。行政執行機関が諮問機関である市常会の名を借りて事業を進めると独断専行になりかねず、市会の存在は形骸化の危機に立つことになる。こうした市会と市常会の関係を、三沢市長は全道市長会で次のように述べている。
一 | 、市常会は法定権無く協賛事項の実施に際しては経費関係上更に市会の決議を要する、しかし市会は市常会に対して多分に白眼視の傾向があるので斯る場合必ずしも事毎に市会が同意するとは限らない。 |
二 | 、市常会に法定権限を与ふるとせば勢ひ市会の権限を限定縮小せざるを得ざることゝなり随って二種の市会を存するの結果となる。 |
三 | 、市常会に経費支出の決議をなすの権限無ければ審議事項の範囲は甚だ狭小且つ適当なる協議問題は忽ち欠乏し年二回乃至三回で充分となり委員も自然熱意を失ひ活動は期待できぬ。 |
四 | 、市常会の協議は多くは市長の諮問に対して行はれるが市長は市会の状勢又は傾向を考慮せずして自由に諮問を発するの無謀を為さざるべきが故に諮問案も自然に貧弱微温的のものとなるを免れない。 |
五 | 、市常会委員が自発的に熱心活発に意見を出しこれを実現せしめんとする傾向に在るとき市長においてよく市会を導いてこれを容れしむるか又は市会に依りてこれを抑制する能はざるときは市長は屢々常会の間に板挾みの苦境に起つ。 |
六 | 、市会と市常会を帝国議会における二院制度の如く対立せしむるの制度を考ふることを得るもこれはその重複、煩瑣、事務遅滞の点において市政については決して適切なる制度ではない。 (樽新 昭17・6・23) |
さらに三沢市長は市会と市常会の統合を考え、審議機関を新設して市政の全般を処理する「新審議機関制度要綱」を練っていたが、具体化には至らなかった。それに代わる方策が翼賛選挙であったとみることもできよう。もっとも市制が改正されると、その第八二条によって札幌市参与条例が十八年九月にでき、翌十九年一月、市常会委員中より選任された一一人と伊沢助役が市参与に発令され、市行政の運営に関する重要事項につき協議し、市長に意見を述べる会議が設定された。