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福祉政策の基盤整備

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 昭和四十六年度予算は、これまで三期一二年にわたって市長の席にあった原田市長による最後の予算編成となり(翌四十七年度予算は、原田市政を継承して新市長となった前第一助役の板垣武四が、政令指定都市となって初めて編成)、その重点を街路事業などオリンピック事業の総仕上げと、公害対策、乳幼児と老人対策に置いた。
 歳入では、市税の歳入比率は依然として低下し続けて三三・七パーセントにまで下落したのに対して、地方交付税・交付金は八〇パーセント増の六六億六〇〇〇万円、市債が三五パーセント増の四六億四〇〇〇万円となった。いうまでもなく市債の増加はオリンピック事業の完遂にともなうものである(表7)。
 一般会計歳出では、総務費にオリンピック関連施設費五億六〇〇〇万円を計上したほか、新市庁舎建設費一五億六〇〇〇万円、政令指定都市に備えた合同庁舎買収費一億円、オリンピック組織委員会補助六億六〇〇〇万円などを含んで、同費は四八億八〇〇〇万円と、約五〇パーセントもの増加を示した。またオリンピック関連の土木費では、道路の除雪と機械購入を含めた除雪関係で九億円を投入した。四十二年度から続く総務費の膨張は、オリンピック事業の展開に基づくものであり、その意味で当年度のひときわ高い水準は文字どおり同事業の総仕上げを背景とするものであるが、それと並んで、社会福祉関係の経費が当年度から急膨張することも見逃せない(表10)。
 すでに四十四年度の予算編成時に、原田市長は福祉事業の強化を方針に掲げていたが、翌四十五年度予算では、民生費を対前年度三四・五パーセント増の七八億円投入した。当年度の主要事業は、公立乳児保育所と福祉ホームの新設、妊産婦保健健康診断の無料化であった。
 また四十六年度予算は、「五輪後の方向付け」を明確にする予算といわれ、オリンピック関連経費を除くと、民生費の社会福祉費や児童福祉費が急膨張している。具体的な新規事業としては、社会福祉費では、公立保育所二カ所を増築し、手稲に特別養護老人ホームを建設した。また保健衛生費では、公害対策予算を前年度より五割増として大気汚染監視室を設置したほか、救急医療センターを新設した。また下水道会計も空前の膨張を示し、その総額は八三億五〇〇〇万円で前年度のほぼ二倍となった(表11、道新 昭46・1・18、1・30)。このうち公害対策への市の取り組みは、「公害議会」といわれた四十五年九月の市議会で公害対策特別委員会が設置されてから本格化し、同年十二月には「水質汚染・騒音大気汚染」が市の三大公害であるとする「公害白書」を完成させた(十二、十三期小史)。そうした意味で、政令指定都市をにらんだ当年度予算は、「ポスト五輪は住民福祉と教育の充実」という住民の期待に答えられるかどうかの試金石でもあった(道新 昭46・1・10、1・18、1・19、1・30、47・2・15)。