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三十年代の一般地域劇団

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 昭和二十年代後半から三十年代、職場演劇と入れ替わりに登場、活躍した地域の一般劇団の多くは、職場演劇や学生劇団、各種養成所等である程度の経歴を積んだ若い演劇人が中心となって結成されている。離合集散を繰り返すなかで、数々の記憶に残る名舞台が生み出された、と記録は伝える。が、その時その場に居あわせた者だけが享受することのできる演劇の特殊性から、真の意味で演劇作品の記録は存在しない。また対象とする時代がきわめて近い過去であるために、今後どのような継承、発展がなされるかは未知数で、成果・評価を適切に語れない。
 したがってここでは、主だった劇団の、結成(もしくは旗揚げ)の時期と、設立者(もしくは代表者、代表的な劇団員)および結成の背景、主な舞台を、結成順に列挙する。いくつかの潮流が見えてくるはずである。
十日会 二十八年六月創立 代表者-酒匂幸景、佐久間安世。
HBC演劇講座(前述)の終了後、酒匂が細田恵子等に呼びかけて、十日ごとに集まる研究会発足を提案。二十九年十月に第一回公演を行い劇団となった。
主な舞台-『姫岩』『女の一生』『天使の背中』『そよそよ族の叛乱』
 
赤いチョッキ 二十八年九月創立 代表者-口澤貞一。
札幌演劇研究所(前述)終了後、口澤貞一、村上省吾、近藤敏夫等が職場演劇にあき足らず集まって研究会を続け、二年後に結成。
主な舞台-『雲の涯』『夕鶴』
 
麦の会 二十九年十月旗揚げ 代表者-真杉清、矢木原敬。
「芝居好きな若者たちが戯曲を持ちよって演劇への夢を願いを語り合う同人的な集まり」(矢木原敬・札幌の演劇)として発足、岸田国士作品と出会ったことから劇団を旗揚げ。三十三年から「赤いチョッキ」と合同公演をもち、三十六年合併してアトリエ座を結成。
主な舞台-『落葉日記』『夜の訪問者』『城館』『崖のうえ』『にんじん』
 
札幌小劇場 三十年十二月結成 代表者-菅井誠良
さっぽろ芸術座の活動にあきたらない若手が、菅井を担いで分裂、旗揚げ。
主な舞台-『瓜子姫とあまんじゃく』『早春』
 
現代劇場 三十一年十月旗揚げ 代表者-五十嵐久一、西沢武夫。
本田明二、九島勝太郎等、有名文化人が参加して『絵婆女房』『うぐいす』を公演。一回のみ。
 
劇団創造 三十二年十月創立 代表者-松波喬介。
現代劇場に参加し離反した松波喬介、斎藤誠治らが、多海本泰男をさそって設立。
 
劇団にれ 三十三年十二月創立 代表者-関口英一
札幌市役所演劇サ-クルの中心メンバ-だった関口、中尾博之、竹内良が発起人となり、団員を公募して設立。(職場演劇の項参照)
主な舞台-『他人の首』『山脈』『明治の柩』『オット-と呼ばれる日本人』『ワ-ニャ伯父』『夕鶴』『赤毛のアン』
 
劇団さっぽろ 三十四年四月創立 代表者-鈴木喜三夫、林中直樹。
高校演劇(第一回高校演劇コンク-ルの項参照)から玉川大学へすすんだ鈴木が、児童劇団こりす(三十二年創立)で活動するなかで構想を固め、演劇を生業とする専門劇団をめざして結成。創立早々に、多くの退団や離脱があり、残った飯塚光友、今野史尚等とともに地道な活動を継続。行動力を発揮して演劇教室、学校公演、道内巡演などを柱に、北海道の主要劇団としての歴史を刻んだ。昭和五十年代以降、稽古場整備、法人化、付属演劇研究所開設、劇団後援会結成など組織の充実を図り、演出家飯田信之による一般向け、学校向け創作劇を打ち出す。
主な舞台-『アンネの日記』『トタンの穴は星のよう』『常紋トンネル』『ユック』『蛙昇天』
 
劇団くるみ座 三十四年十二月創立 代表者-緒方浩司、深山忠昭。
劇団さっぽろ創設に参加したが、間もなく劇団どらに移り、さらにここも脱退した深山、緒方ら五人が結成。
 
劇団新劇場 三十六年十一月創立 代表者-多海本泰男。
札演協合同公演『十二夜』(後述)をきっかけとして、創造とくるみ座が合併。「リアリズムの演劇理論と技術の向上発展につとめ、市民のための演劇運動を推進する」(劇団結成時規約)ことを目的として結成した。創立の翌三十七年九月東京三期会(現東京演劇アンサンブル)の広渡常敏を演出に招いて、ブレヒト『母(おふくろ)』を公演。北大演研、三期会の女優・林洋子も参加して、札幌の演劇に大きな刺激を与えた。初期十余年は、硬派の理念を柱に他劇団との合同による大作傾向が続くが、四十年代後半以降、山根義昭演出でたくましく生きぬく女性を主人公とする作品が多い。
主な舞台-『前哨戦にて』『森は生きている』『八月三十日』『おりん口伝』『霰』『オホ-ツクの女』『からゆきさん』『流氷の海に女工節が聴える』

 このほか、札幌北、西高校演劇部OBによって結成された木月会(二十九年十月創立・深山忠昭、鳥海淑子ほか)、いふの会(三十五年七月創立・池上啓一、小山泰介、広川和夫ほか)、学芸大札幌分校OBによる劇研せかち(三十六年三月創立)、クリスチャンセンターの文化活動である劇研ダビデ(三十六年十月創立・三枝礼三)などがある。また三十一年、武内昭二を中心に、照明・装置等を専門に担う「ほりぞんと・ぐるうぷ(現株式会社ほりぞんとあーと)が発足した。
 上記のうち平成十三年(二〇〇一)末現在、劇団にれ劇団さっぽろ劇団新劇場が活発な活動を継続している。