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バブル崩壊と市財政

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 板垣市政を継承して平成四年四月に発足した桂市政にとって、その予算編成は当初から極めて厳しいものになった。いうまでもなくバブル経済が崩壊し、「失われた一〇年」と呼ばれる、日本経済がかつて経験したことのない長期間の不況に見舞われることになったからである。
 不況はまず税収を直撃し、平成五年度予算では対前年度伸び率が三パーセントと過去最低を記録したのに続いて、翌六・七年度には税額が前年度を割り込むという異常事態となった(表1)。なかでも深刻な落ち込みを見せたのが法人市民税であり、五・六年度は連続して前年度に比して一五パーセント以上の落ち込みを見せ、企業収益の低調振りをうかがわせた。個人市民税は、法人市民税と比較すると順調であるが、それでも十年度以降は毎年前年度を下回ることになった(表2)。
 さらにこうした市税の継続的な減収は、それまで続いてきた市財政の歳入構造を一変させた。すなわち、市税に代わって地方交付税市債がこれまで以上に重要な役割を担うことが求められるようになったのである(表1)。
 さらに細かく見ると、交付税は十二年度までかなりの対前年度伸び率を確保しているのに対して、市債は平成五~八年度にかけて毎年二〇~三〇パーセントもの増加を示して六年度には歳入に対する依存度が一〇パーセントに手の届くところまで上昇した。また金額的には、八年度には一〇〇億円を突破した後(表1)、その後は発行が抑制されたにもかかわらず、残高は九年度末に八七〇〇億円と、一般会計規模を凌駕するという事態となった。
 こうした厳しい財政事情の下では、主として土木建築関係の臨時費を捻出するために経常費を厳しく抑制することが求められ、四年度には一般事務経費の一〇パーセントカットで一八億円、使用料手数料の増収で同じく一八億円の財源が捻出された。
 四~七年度の主要事業としては、各種施設の建設と、道路や除雪、公園の整備、ゴミ処理など生活密着型の社会資本整備に力点が置かれた。すなわち、児童福祉総合センター、消防科学研究センター、救命救急センター等の各種施設の建設着手(四年度)、障害者小規模授産施設費用助成の大幅増額、道路改修費と除雪費の増額、ロードヒーティング補助、幹線道路整備、公園の再整備(五年度)、高齢者保健福祉計画の一環としての在宅福祉推進事業の拡充、障害者福祉計画の初年度事業としての在宅障害者デイサービス事業、知的障害者地域生活支援事業の推進、ゴミ処理場造成、焼却場の整備(七年度)などがある(道新 平4・2・8、5・2・6、7・1・21)。
 急速な景気後退に直面した市は、さらに四・五年度を通じて、国の総合経済対策と歩調を合わせた補正予算を組んで景気のてこ入れを行った。まず、四年九月の第四回臨時市議会には、幹線道路一二路線の舗装改良に四六億四〇〇〇万円、下水道事業として管渠整備に三億円、東部地区土地区画整理事業に一億二〇〇〇万円と、景気対策を要とする補正予算としては過去最大規模となる総額五〇億六〇〇〇万円の補正予算案を提出した。
 さらに同年九月の第三定例会では、「中小企業経営安定特別資金」(利率年四・五パーセント)の創設所要資金二五億円の追加を盛り込んだ一般会計補正予算を提出した(新規融資枠は五〇億円)。結局、四年度の一般会計を含む四会計での補正予算総額は、二五一億円にも達した。
 翌五年度予算においても、同年九月の国の「緊急経済対策」、並びに所得税・住民税減税と公共投資の拡大を柱とする六年二月の「総合経済対策」と連動して、振興資金貸付金追加六〇億円及び景気対策補正予算七五億五〇〇〇万円を含んだ補正予算が組まれた。その結果、五年度の景気対策関連補正予算額は五五九億円に達し、四年度の六〇パーセント増となった(十八期小史)。またこれらの景気対策の実施は、当初予算にも反映されている。例えば、四~八年度においては、土木費補助金がかつてない規模で増額され(表3)、土木費の総額も八年度までは引き続いて上昇している(表5)。