表4は『札幌市統計書』より市内における各宗派・教団の寺院数を、昭和四十七年(一九七二)以降、五年おきに平成十四年(二〇〇二)まで示したものである。まず総計からみると四十七年は一七五寺であったが、年ごとに漸増しており、平成十四年には二五一寺となっている。この三〇年間に七六寺が増えたわけであり、平均すると毎年二・五寺開設されていたことになる。前巻(通史5上)で示したデータでは、昭和三十一年から四十五年にかけて一五七寺から一七〇寺へという、一三寺の増加に過ぎなかったことを勘案すると、四十七年以降の増加は異例な程の増加ぶりであったといえる。
| 昭47 | 昭52 | 昭57 | 昭62 | 平4 | 平9 | 平14 |
真宗大谷派 | 38 | 39 | 39 | 37 | 39 | 42 | 43 |
浄土真宗本願寺派 | 27 | 28 | 28 | 29 | 32 | 31 | 31 |
真宗仏光寺派 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
真宗興正派 | 7 | 7 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
真宗国分寺派 | ― | ― | 4 | 6 | ― | ― | ― |
真宗三門徒派 | ― | ― | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 |
真宗誠照寺派 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
真宗高田派 | ― | ― | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 |
真宗長生派 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
真宗木辺派 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
真宗系各派 | 6 | 6 | ― | ― | ― | ― | ― |
曹洞宗 | 18 | 19 | 22 | 25 | 30 | 33 | 37 |
日蓮宗 | 15 | 18 | 21 | 24 | 24 | 26 | 26 |
日蓮正宗 | ― | ― | 4 | 5 | 6 | 6 | 6 |
日蓮宗系各宗派教団 | 2 | 2 | ― | ― | ― | ― | ― |
日本山妙法寺大僧伽 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
本門法華宗 | 1 | 2 | ― | ― | ― | ― | ― |
法華宗本門流 | ― | ― | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
法華宗真門流 | 7 | ― | 7 | 6 | 6 | 6 | 5 |
法華宗陣門流 | ― | 7 | ― | 1 | 1 | 1 | 1 |
本門仏立宗 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
本門仏立派 | 1 | 1 | ― | ― | ― | ― | ― |
浄土宗 | 8 | 8 | 9 | 9 | 9 | 9 | 10 |
浄土宗各宗各派 | 4 | 3 | ― | ― | ― | ― | ― |
浄土宗西山禅林寺派 | ― | ― | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 |
浄土真宗遺迎院派 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
高野山真言宗 | 3 | 3 | 5 | 5 | 7 | 8 | 9 |
真言宗国分寺派 | 4 | 4 | ― | ― | 6 | 5 | 5 |
真言宗智山派 | ― | ― | 8 | 9 | 9 | 8 | 7 |
真言宗醍醐派 | ― | ― | 11 | 10 | 7 | 8 | 6 |
真言宗系各宗各派 | 15 | 16 | ― | ― | ― | ― | ― |
天台宗 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 3 | 3 |
天台真盛宗 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
天台宗系諸派 | 1 | 1 | ― | ― | ― | ― | ― |
最上稲荷教 | ― | ― | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
臨済宗妙心寺派 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
金峯山修験本宗 | ― | ― | 1 | 1 | ― | ― | ― |
生駒白水山釈王宗 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 1 |
単立寺院教会 | 12 | 18 | 24 | 34 | 30 | 33 | 35 |
計 | 175 | 188 | 214 | 233 | 238 | 246 | 251 |
次に各宗派・教団別にみると、四十七年では
真宗大谷派三八、浄土真宗
本願寺派二七、
曹洞宗一八、
日蓮宗一五などとなっていた。これが平成十四年では、それぞれ増加して大谷派四三、
曹洞宗三七、
本願寺派三一、
日蓮宗二六などとなり、特に
曹洞宗では一九、
日蓮宗でも一一と両宗の大幅な増加ぶりが目につく。
宗派・教団に属さない単立寺院は四十七年に一二であったが、これも平成十四年には三五となっており、やはり大幅な増加である。単立寺院には後述のように、五十三年に大谷派より七寺が離脱し単立化したケースもある。
寺院数の増加の理由は、市内の人口・世帯数が四十七年の約一一〇万人、三五万四三〇〇世帯から平成十四年には約一八四万人、八一万二六〇〇世帯となっており、これに対応したものである。人口・世帯数の増加は必然的に葬祭および先祖供養の需要増加をもたらしたのであり、寺院の増加を必要とする最大の理由はここにあった。寺院の多くは「寺―家」の檀家関係で結ばれている宗派・教団の寺院であり、葬祭などが契機となって檀家関係が生じていた。ただその一方では、近年では招福除災の祈祷、
水子供養など個人の私的信仰に対応する寺院も、単立寺院にみられるようになってきている。市内に単立寺院が増加しているのも、既成寺院では対応できない大都市ならではの信仰欲求が増大化しているからに他ならない。このことは札幌が大都市化してきている証左ともみられ、新宗教の施設増加とも関係しているであろう。
表5は昭和四十七年以降に市内に開設された、宗派・教団に所属する七二寺を一覧したものである(単立は除く)。開設の年月日は、主に宗教法人認証の年月日を採用している。新設寺院数も表4の増加数と必ずしも対応はしていないが、表5をもとに新寺院開設の状況を概観しておくことにする。所在地は各区にまんべんなく分布しており、あまり片寄った偏在はみられないものの、白石・豊平区四寺、中央・厚別・
清田区五寺は少ない方である。多いのは東区一二寺、南区一〇寺、北・西・
手稲区九寺である。所在地からわかるように都心部とその周辺は少なく、むしろ
清田区平岡、西区前田、北区篠路などのように、新開の住宅地域に多く開設されている傾向がみられる。こうした地域は同宗派・教団寺院の空白地帯であること、地価が安く土地が入手しやすいこと、菩提寺をもたない新世帯が多く壇信徒獲得の可能性が高い地域であったことなどが、その開設理由として考えられる。以上のように、都心部から郊外の住宅地へ寺院が進出していくことが、札幌における近年の特徴であった。
寺名 | 教派・教団 | 所在地 | 開設 | 備考 |
現来寺 | 大谷派 | 北区北28西15 | 昭47・ 2・24 | 札幌別院支院 |
芳円寺 | 同 | 西区八軒6西1 | 昭47・11・28 | |
正信寺 | 同 | 東区北34東9 | 昭56・ 7・28 | 当麻町より転入 |
圓乗寺 | 同 | 南区北ノ沢1726 | 昭57・ 6・ 7 | |
圓楽寺 | 同 | 清田区北野3-5 | 昭59・ 1・ 7 | |
専修寺 | 同 | 手稲区前田5-9 | 昭59・ 1 ・7 | |
鳳凰寺 | 同 | 中央区宮の森4-12 | 昭60・ 5・ 8 | |
正得寺 | 同 | 西区宮の沢490 | 平 2・ 3・30 | |
即成寺 | 同 | 手稲区前田9-17 | 平 6・ 1・26 | |
正楽寺 | 同 | 東区東苗穂9-1 | 平 7・ 3・ 8 | 音別町より転入 |
綱遵寺 | 同 | 南区簾舞3-1 | 平 8・ 2・27 | 音更町より転入 |
明徳寺 | 同 | 厚別区厚別南6 | 平 9・ 6・16 | 平取町より転入 |
観照寺 | 同 | 西区山の手3-5 | 平10・ 5・26 | |
慧照寺 | 同 | 南区澄川458 | 平14・11・29 | |
萬行寺 | 本願寺派 | 東区北51東1 | 昭50・10・17 | 元夕張市萬行寺別院 |
大念寺 | 同 | 西区二十四軒3-5 | 昭47・10・19 | |
浄光寺 | 同 | 北区新琴似546 | 昭52・ 4・ 1 | 沼田町より転入 |
真宗寺 | 同 | 手稲区手稲本町2-5 | 昭53・ 3・ 3 | 元大乗寺支院 |
浄土寺 | 同 | 北区篠路1-8 | 昭63・ 5・25 | |
広大寺 | 同 | 清田区平岡8-3 | 平 1・ 3・24 | 歌志内市より転入 |
如来寺 | 同 | 白石区川北1-3 | 平 4・ 3・31 | 元大乗寺支院 |
光蓮寺札幌道場 | 高田派 | 東区東苗穂9-2 | 昭60・ 1・25 | |
養福寺 | 曹洞宗 | 西区西野7-9 | 昭49・ 1・10 | |
瑞法寺 | 同 | 東区東苗穂10-2 | 昭50・ 5・13 | 瑞法院、平4・6* |
禅聖寺 | 同 | 厚別区厚別西2-5 | 昭53・ 7・14 | |
峯光寺 | 同 | 東区北丘珠4-1 | 昭55・ 9・13 | |
常禅寺 | 同 | 北区篠路2-2 | 昭56・ 4・14 | |
禅福寺 | 同 | 清田区平岡5-3 | 昭58・ 7・18 | |
禅宥寺 | 同 | 手稲区星置3-6 | 昭61・ 6・30 | |
禅徳寺 | 同 | 手稲区前田1-6 | 昭62・10・23 | |
東禅寺 | 同 | 東区北50東6 | 昭63・ 7・ 7 | |
清泉寺 | 同 | 清田区清田7-2 | 平 1・ 6・12 | 昭59・12・25* |
南禅院 | 同 | 南区常盤2-2 | 平 2・ 9・ 5 | |
真龍寺 | 同 | 南区石山2-4 | 平 4・ 2・18 | |
慈光寺 | 同 | 白石区川下3-6 | 平 6・ 7・27 | |
大徹寺 | 同 | 豊平区平岸6-17 | 平 7・ 6・21 | |
天瑞寺 | 同 | 南区中の沢1815 | 平 8・ 3・ 1 | |
龍藤寺 | 同 | 白石区菊水元町3-4 | 平10・11・20 | |
大慈寺 | 同 | 東区伏古14-4 | 平11・ 1・29 | |
洞源寺 | 同 | 南区南沢6-3 | 平12・ 8・11 | |
薬王寺 | 同 | 中央区宮の森2-17 | 平12・ 8・22 | 昭59・ 6・22* |
瑞芳寺 | 臨済宗妙心寺派 | 東区北45東10 | 昭56・ 4・30 | |
聖恩寺 | 日蓮宗 | 中央区宮の森2-17 | 昭48・ 8・ 2 | |
本行寺 | 同 | 南区中の沢1762 | 昭52 | 美唄市より転入 |
日豊寺 | 同 | 南区真駒内東町1 | 昭53・12・19 | 昭50・12・19* |
妙行寺 | 同 | 手稲区富丘2-5 | 昭53・ 8・19 | |
宝塔寺 | 同 | 北区篠路町拓北30 | 昭59・ 6・ 6 | |
遠成寺 | 同 | 手稲区手稲本町4-4 | 昭60・ 2・12 | |
篠路教会 | 同 | 北区篠路9-3 | 昭62・11・25 | |
神聖寺 | 同 | 手稲区西宮の沢1-4 | 平 1・12・28 | 現一龍寺 |
清恩寺 | 同 | 北区新琴似11-15 | 平 2・ 3・30 | 旧大黒教会 |
六牙院 | 同 | 豊平区平岸2-17 | 平 7・12・14 | |
佛見寺 | 日蓮正宗 | 中央区南21西13 | 昭47・ 8・22 | |
大慈院 | 同 | 清田区平岡3-1 | 昭56・ 3・ 6 | |
行足寺 | 同 | 白石区北郷2367 | 昭56・ 2・ 2 | 昭53・ 9創設 |
聞仏寺 | 同 | 手稲区前田10-10 | 昭59・ 1・20 | 昭55・12・20創設 |
直唱寺 | 同 | 厚別区厚別中央4-2 | 平 2・ 2・23 | |
光徳寺 | 高野山真言宗 | 東区北8東3 | 昭55・ 6・26 | |
弘徳寺 | 同 | 北区太平10-7 | 平 3・ 8・12 | |
浄峰寺 | 同 | 北区篠路3-3 | 平 4・ 4・23 | |
隆心寺 | 同 | 豊平区福住2-8 | 平 6・10・ 5 | |
広照院 | 同 | 東区本町1-3 | 平12・ 8・11 | |
大照寺 | 真言宗智山派 | 厚別区大谷地東3 | 昭48・ 5・18 | |
吉祥院 | 同 | 西区平和2-2 | 昭60・ 8・15 | 昭56・10・10創設 |
明王寺 | 真言宗国分寺派 | 西区平和264 | 昭51・ 3・13 | |
密修寺 | 同 | 中央区北7西20 | 昭58・10・21 | |
昭妙寺 | 同 | 西区西野14-8 | 昭61・ 7・ 7 | |
本隆寺 | 法華宗本門派 | 西区八軒3東4 | 昭52・10・11 | |
本顕寺 | 同 | 南区川沿5-3 | 昭54・ 6・ 6 | |
本誠寺 | 同 | 厚別区上野幌1-3 | 昭57・ 1・ 6 | |
妙珖寺 | 法華宗真門流 | 東区東苗穂10-3 | 昭60・12・23 | |
光明寺 | 浄土宗 | 豊平区平岸4-5 | 昭56・ 9・29 | 昭54・12創設 |
『北海道宗教法人名簿』(北海道、平14)。開設は同書による認証年月日をもとにした。備考の*は寺号公称。大谷・本願寺派は一部、北海道教務所の調査を含む。単立は未掲載。 |