[翻刻]

(1)安政六年五月七日
一 夕方産物産物会所より町奉行御出ニ付参候様申参り罷越候處御勘定御奉行様松本左右衛門様小川忠左衛門様御一統御出ニ而被仰聞候者今般神奈川交易御免ニ付紀州会津上田産物三家交易御願立ニ相成御聞済有之尤右三家共取扱ハ芝金杉撰之助江被仰聞御任セニ、成同人より願立相成候手続柄書留被成御見セ来月二日交易手始ニ而申立相成候産物品々此度出荷致ニ付松本左右衛門林之助吉五郎立戻り候得共御上ニも金子ハ御不通融ニ付夫々商売体申談多少ニよらず出荷可致候様得と申談取計可申打合も無之ニ付取急候様被仰聞候
右種々申談候得共手始之義ニ有様子も不相訳義ニ付買揚之趣意ニ取計候様申談引取申候
外国御奉行様江願出御聞済ニ付相成候品左ニ
一 紀刕様御産物 一塗物 一木綿類 一傘類 一棕呂箒
         一棕呂皮 一蜜かん 一九年母 一生蝋
         一干藻類 一葛 一陶器類 一茶
一 会津様御産物 一塗物類 一人参 一麻荢並織物
         一絹糸同織物類 一真綿 一煙草
         一新刀剣同付属之小道具 一藻草
一 信刕上田産物 一白絹糸同織物類 一木綿 一真綿
         一麻荢 一うるし 一紙類 一生蝋
         一傘類い 一石炭阿ふら 一松油 一人参
         一麦粉 一鉛 一鋸並〓《いたがね》一煙草
右之通産物交易売込共願人芝金杉片町中居撰之助と申者取扱御聞済之由ニ候
 
(2)安政六年六月二十四日
一 神奈川横浜貿易十九日相始糸引合相成候旨、此方より御用掛りニ罷出居候武蔵屋祐助二十二日暁海野宿?罷越万屋万平江申遣対談いたし糸拾駄両ニ百め乃直段買付ノ仕切差出候旨追而申出候処、産物会所へ者一円右之義沙汰無之、海野町方ニ而疑念有之彼是差縺、第一如何ニ取計候哉、此方より出張居候者も当会所を差置外々江爲知候者不宜義ニ付、江戸表江掛合状参候
右糸之義追々申談、両町より十駄弐ツ割ニいたし出荷可然旨相談決し候事
 
(3)安政六年七月朔
一 神奈川交易引合相済候ニ付、糸アメリカへ四拾五駄、オランダ人江七駄、其外香仁香干多葉粉見本として差送様ニ江戸より申参候へ共、糸之義金子差送り無之候分者出荷方手段無之ニ付、急飛脚江戸へ差立申候。      6