としまひすとりぃ
ひと×街 ひすとりぃ

様々なひとが暮らす街。
ひとりひとりの日々の暮らしからそれぞれの物語が紡がれ、街の歴史を織りなしていく…
そんな物語の軌跡を区民インタビュアーがたどります。


4 作業所の仕事、「noie(ノイエ)」の製品化
  巣鴨「マルジ」の地域貢献活動

「麦の家」で制作している布製品を「noie(ノイエ)」というが、これは通所者の方々が「麦の家」から名づけたそうだ。

布に直接、洗っても落ちない絵具で絵を描く。「今日はこんな感じで描いてみようか」とちょっとしたヒントを与えながら作業をするらしいが、「その人ごとに特徴があるんです。自閉症のこの方は、お魚って言っても、何って言っても大体いつもこんな雰囲気の絵になります。みなさんそれぞれで」と礒﨑さんが言うように、それぞれの人が個性を十二分に発揮している。

筆を使ったり、箸を尖らせて線みたいに描いたり、その時によって様々。大きな布に自由自在に絵を描いてもらい、職員がその部分を切り取って袋物に仕立てていく。そして、これら製品の売り上げ収入は、描いた人に全額還元されている。ただ、製品を売る場が年1回の「ふくし健康まつり(※11)」と、年2回の「はあとの木(※12)」などのイベントぐらいしかなく、販売の売り上げは1万円~3万円程度。「これがすごく売れるといいんですけどね」と残念がる。礒﨑さん自身、作ることが好き、しかし、いざ「売らなきゃ!」と思うと意外と神経を使い疲れてしまうという。モノを作って売るというのは、生易しいことではなさそうだ。

受注作業の箸入れ作業が無くなり、代わりの自主作業としてビーズ製品、毛糸製品づくり等を試行錯誤していた時に、赤い下着で有名な巣鴨のとげぬき地蔵通りにある「マルジ(※13)」さんから連絡を受ける。ちょうど平成23(2011)年3月の東日本大震災があり、そのすぐ後に「どうしたら被災地に寄付できるでしょうか?」と聞かれたので、寄付の方法を伝え、礒﨑さんからも、「何か私たちが出来るお仕事はないでしょうか?」と聞いてみたら、それまで店員さんがやっていた仕事を回してくれることになった。

「マルジ」さんでは、人気商品の赤い下着を作った時に出る切れ端がある。その切れ端を適当な大きさに切り、「幸福のおすそわけ」というカードをホチキスで止める作業である。店頭でお客様に無償で配られ、それをどう利用するかはお客様次第だという。楽しみにしている方も多いようだ。「誰でもできるという仕事はなかなかないのです。そういう仕事をやらせてもらってお金をいただいています。ダンボール1箱あたりの値段でいただくお仕事で、それがかなり良い収入になります。それをマルジさんは無料で配っているので、まるっきり赤字だと思う。だからマルジさんには本当に頭が下がります」と、地域に根差した社会貢献に感謝する礒﨑さん。

また、店の横にマルジ編集の新聞が貼られていて、そこにも「麦の家」の記事を掲載してくれているそうだ。「まわりで助けてもらえるっていうのが一番ですよね。知ってもらって、というのが」と嬉しそうに笑った。

noie制作風景(写真提供:「麦の家」)
noie制作風景(写真提供:「麦の家」)
はあとの木(ロゴ)
「はあとの木」マルシェ+「麦の家の販売の様子」
(はあとの木のBlogより)
※11 ふくし健康まつり 平成2(1990)年「ふくしまつり」として第1回開催以降、健康や社会福祉・ボランティア活動の啓発および、世代や障害を越えた区民の参加と交流を目的として毎年開催。

※12 はあとの木 豊島区内の障害者福祉施設が、ものづくりを介して人との多様な関わりを目指すネットワーク。平成19(2007)年スタート、平成31(2019)年4月現在11事業所が参加。年2回、全施設が集まり「としまセンタースクエア」で販売会「はあとの木」マルシェ+(プラス)を開催。

※13 マルジ 巣鴨地蔵通りに4店舗を構える洋品店。昭和27(1952)年創業。元祖赤パンツの店として多数メディアで紹介。

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