としまひすとりぃ
ひと×街 ひすとりぃ

様々なひとが暮らす街。
ひとりひとりの日々の暮らしからそれぞれの物語が紡がれ、街の歴史を織りなしていく…
そんな物語の軌跡を区民インタビュアーがたどります。


2 「ここが全部バラになったら素敵だよね」

林さんが世話を引き継いだベンチ花壇には、夫の洋さんが育てた菊やチューリップ、そしてバラなどが咲いていたが、まだ都電の線路沿いにはバラを植えていなかった。線路沿いにバラを植えようという動きは、商店街の若手有志からなる「南大塚ネットワーク」(※7)のメンバーであり、家族ぐるみで付き合っていた城所信英さんとの会話からうまれたという。
「『ここが全部バラになったら素敵だよね』って話したら、城所さんが『できるよ』って言ったんです。それから城所さんが『(南大塚都電沿線)協議会』(※8)をつくってくれて、みんなでバラを植えようっていうことになったんです。
それと、荒川区の尾久からお嫁に来た人が、婦人部のいろんな人に育て方を教えてくれてたんですね。その人が『みんなで一緒にバラを栽培しましょう』『香りのあるバラを植えましょう』『1株ずつでいいから、いろいろ植えたほうがいいんじゃない?』って提案してくれてたんです。いろんなバラが見られたらうれしいですからね」

ある記憶が、その日の天候や気温などと結びついていることがある。林さんと城所さんがバラの話をした日は、風が強い日だった。風はバラの生育の鍵でもあり、電車が風を運んでくる沿線にバラを植えるというアイデアが、運命的にかみ合わさったのだ。「風は大事。人間もそうです。風、空気が流れないとね。都電が走って風が吹くからいいんです」――こう林さんが強調するように、沿線にバラを植える計画もまた、風が吹き抜けるようにいい流れで進んでいく。
「城所さんが協議会をつくってくれて、流れができたんですね。全面的に協力してくれた(豊島区の)部長さんの提案で、4年計画でやりましょうっていうことになった。4年だから、すぐやらないと立ち消えになっちゃう。だから『ヨーイドン』で一気にやったんです」

※7 南大塚ネットワーク(MON) 大塚駅南口にある「サンモール大塚」「盛和会」「商興会」の3つの商店街の若手有志が中心となり、平成16(2004)年6月、当初は大塚の魅力満載のホームページを運営する目的で発足。

※8 南大塚都電沿線協議会 平成18(2008)年12月、「自分たちの街大塚をなんとかきれいにしよう」と地元町会や商店街、地域住民等が集まり発足。大塚から向原までの都電沿線の植え込み周辺のごみ拾いや草むしり、水遣りなどの植樹に向けた準備作業から始めた。


バラ植樹前の南大塚の都電沿線の景色

南大塚都電協議会(以下、協議会)による沿線緑化計画は、大塚駅から向原駅までの沿線にバラを種類ごとに植えていこうというもので、平成20(2008)年に始動。林さんは協議会のメンバーとともに植樹作業に入った。(※9)

このとき、林さんは100株ほどの真っ赤なバラと出合う。20数年前に豊島区が植樹したタチャーナというバラで、放置自転車やゴミで雑然とするなかでも生き残っていたのだ。林さんいわく「花束みたいに」咲き、いまや見事に息を吹き返している。

※9 関連資料:H210220プレスリリース

平成21年2月22日から地域住民によるバラの植樹がはじまった。


豊島区

Copyright © Toshima City. All rights reserved.

お問合せ先:豊島区広報課