様々なひとが暮らす街。
ひとりひとりの日々の暮らしからそれぞれの物語が紡がれ、街の歴史を織りなしていく…
そんな物語の軌跡を区民インタビュアーがたどります。
4 バラを介した人の交流がバラを育てる
大塚のバラの特長のひとつが、有機肥料で育てていることである。無農薬だと虫がつきやすいが、林さんはバラを育てる先輩たちと交流することで有機栽培を実現してきた。まず、肝心の有機肥料は、かつてタチャーナを植えた区の職員がつくってわけてくれている。切ったバラを原料にした肥料だそうだ。
専門家の意見もおおいに取り入れてきた。「バラのソムリエ」としてTVなどで活躍する小山内健氏(※12)を囲んだ勉強会で得た知識は、年間の手入れスケジュールに活かされている。
「小山内先生が教えてくれたんですけど、ネキリムシはティータティータ(ミニ水仙。ティタティタとも)が嫌いなんですって。2月にはこれをいっぱい植えるので、2月の大塚はきれいなんですよ。黄色いスイセンがわーっと咲いて。
除草剤とか農薬を使わずに虫がつかないようにするには、梅雨になる前に植えるセダムっていう下草も大切ですね。肥料が流れないようにする草で、夏に乾燥や暑さから守ってくれて、冬は暖かいんです。これをバラのまわりに植えておく。いろんな種類のセダムで実験したんですけど、虫がついちゃったり、夏に群れちゃったりで、ここに合ったセダムだけが生き残ってますね」
虫の駆除には、地道なチェックも欠かせない。見つけたら痛んだ葉を取り除くなどしているが、できる範囲で作業するのがポイントだ。
「アブラムシはいつもチェックしてて、見つけたら指先でつぶすんです。最初につぶしちゃうと広がらないから、いつも通りがかりに見てますね。それから、今年は葉っぱにハモグリガっていうのがついちゃったんです。無農薬でやってるから、しょうがないといえばしょうがないんですけどね。葉っぱが黒くなっちゃうので、ついた葉っぱをみんな取ったの。バラが満開になる前に葉っぱを取ったから、今年は結構きれいだったと思います。
花を食べちゃう虫とかいろんなのがいますけど、しょうがないですよね。バラ園じゃないから、私たちのできる精いっぱいのことをやって、あとはごめんなさいっていう。だから結構、多様性になってるみたいです。この前、草を取ってたら大きなウシガエルがいましたよ」
交流都市である山形県村山市(※13)に日本最大規模の『東沢バラ公園』があると知り、仲間たちと研修に行ったことも「バラのまち」を育てるうえでいい刺激になった。
「8人ぐらいで行ったのかな。本当にすごいバラ園なんですよね。いろんな種類があって。私が好きな『ピース(平和)』っていう黄色いバラは素敵ですよ。大きく咲くんです。戦争があって、ピースが出せなかったこともあったそうです」
研修旅行に行った翌年の平成24(2012)年には、村山市からオリジナル品種「むらやま」が寄贈され、大塚台公園に植えた。
「ピンクのバラを公園に植えて、いま面倒を見てます。バラが縁になって、村山市のかたが大塚商人まつり(※14)にも来てくれるんですよ」
プロの意見や先輩からの教えを日々の世話に活かしつつ、仲間たちと試行錯誤を重ね、まち同士の交流にもつながった。バラを愛する人たちの活動が有機的に絡み合い、「バラのまち大塚」を築く土壌となったのである。
関連資料:関連資料:H211017プレスリリース(※2と同じ)