大年寄・中年寄の任務

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 開拓使は翌12月「町役心得条々」という形で、前の京都府の町役人(大年寄、中年寄、町年寄、議事者)心得をそのまま布告している。京都府の「町役可心得条々」は、旧幕時代の色彩をほとんどそのままに、町役人が慎むべき事柄を挙げたものである(「中年寄新田孫右衛門文書」)。さらにこの月開拓使農政掛(民政担当係)は、新任の大年寄以下に対してその職務内容を報告するよう指示した。これに応えて、「御尋ニ付奉申上候書付」という大年寄3名連記の報告書(明治2年7月「沽券地御用留」道文蔵)が提出されている。それによって大年寄以下の任務を要約列記すると次の通りである。
 
大年寄の任務
・住民の諸願届や公事訴訟の事実確認の上、奥印して願書を提出すること。(一般の願伺届への奥印は明治9年4月に廃止)
・金銭上のもめごとは中年寄が取扱い、中年寄で解決できないことは大年寄が双方の利解に努め、それでも片付かないときは奥印して願い出ること。
・御用向御達については中年寄を通じて市中に通達すること。
中年寄の任務
・毎日町会所へ出勤、大年寄の差図に従い当番制で御用向きを処理すること。
・諸上納金銭取立方を担当すること。
・御役々衆通行の節は町代に指示し適宜宿割をすること。
・市中の諸願諸届等は夫々相糺し大年寄へ届け調印すること。
・市中一般の御用向には必ず立会うこと。
町代の任務
・御用向御達の伝達は各町の組合頭を通じて行うこと。
・諸上納物の各町毎の取りまとめを行うこと。
・人別取調べの際(10月)は町会所に詰め、市中の者が持参する下調べを篤と取調べること。
・大年寄中年寄が人別入りを認めた人別入り希望者へ町会所で御条目を読み聞かせ人別帳へ記入すること。
・御用に付呼出しの者へ付き添いすること。
・町々の取締りを取扱い中年寄まで報告すること。

 
 以上の通りで、江戸時代の町年寄名主制となんら変わるものではなかった。
 また、大年寄中年寄へ支給する月給は、東久世開拓使長官がその日録に「月給渡小前より取立無之様にとの事」と記してある通り、開拓使が支給することとした。この大年寄、中年寄の月給を官費支給とする考え方は、府県と同一には考えられない北海道の特例と位置付け、大小区制以後も続けられた。