古武井地区には、山背泊漁港を抱く内湾があり、海鳥類の越冬を助けている。一方、日ノ浜地区は古武井川を挟んで砂浜地が続いている。砂浜地は津軽海峡に面しているが太平洋に近く直接太平洋のうねりが入り砂浜地の海への傾斜をきつくしている。そのうえ酸性度の高い古武井川では、川水の影響などから底生生物の生育条件は非常に厳しい、このため環境的、景観的にはシギ・チドリ類の立ち寄りが考えられるが希である。
高岱地区は、日ノ浜地区、古武井地区の後背地として緑豊かな山谷を形成し麓には狭小な台地が恵山自然公園と接している。カシワ林とスギ、トドマツなどの植林がすっかり成長し美林をなしている。
ここでは野鳥も種数、個体数共に豊富であることが確認されている。
オジロワシ タカ目タカ科オジロワシ属、北海道RDB絶滅危惧種、国RDB絶滅危惧ⅠB類、国の天然記念物、本種は、俗に海鷲と呼ばれるように、よく海岸、海上に出てスケトウダラ、サケなど魚類を食している。
本種は、秋から冬、サハリン、クナシリ、エトロフを含む北方領土ほかの島々から渡って来る。渡島半島では八雲町遊楽部川に多くのサケが産卵のため遡上、産卵後のサケの死体(通称ホッチャレと言う)を食するため多数のオジロワシ、オオワシが集結する。多いときは、260羽以上を数えたことがある。
恵山町では、尻岸内川に採卵のためサケ捕獲用の施設があり上流への放流はないが、1月、2月、3月になるとどこからとなく海岸ぞいにオジロワシの飛翔する姿を見ることがある。サケ捕獲施設上流部には、かつて水田灌漑用のダムが造成されていたが、米作に失敗、今は無残な姿を晒している。サケの遡上、自然産卵を助けるために速やかなダムの撤去が望まれる。このことにより、海のエネルギーと陸のエネルギーの循環保全が助長されて、より豊かな自然環境の保全に資することとなる。
なお、オオワシも飛来するがオジロワシとほぼ同数である。オオワシの保護指定はオジロワシと同等である。
クマゲラ キツツキ目キツツキ科クマゲラ属、国の天然記念物、北海道RDB絶滅危急種、国RDB絶滅危惧Ⅱ類。食性はムネアカオオアリが主である。スギ、トドマツ、カラマツ、ドロノキ、などが混じる森林を好み、樹木の下部を移動しながら良く索餌している。このため意外な木の根元、下部に良く食痕を残している。これはムネアカオオアリが地中の根から樹木内に侵入しコロニーを造り増殖しているのをクマゲラが察知し外部から樹木を穿孔しムネアカオオアリを採餌するからである。しかし、クマゲラも樹木の中間部、上部に良く食痕を残すことがある。このときは既にムネアカオオアリまたは別の例えばカミキリムシの幼虫が樹木に寄生したのを察知し穿孔したものと思われる。林業業者にとっては天敵のように嫌われる所以であるが、この事は逆に業者にとって天敵が既にはびこっている予兆と受け止める事態と考える必要がある。
クマゲラは、恵山町では、当地区以外の全ての山林に生息していると考えられ、柏野、川上、女那川、日和山、日浦の各地区で確認した。
ヨタカ ヨタカ目ヨタカ科ヨタカ属、北海道RDB希少種。かつてヨタカは何処にでもいた。駒ヶ岳から南の山野に繁殖していた。しかし、繁殖地の山林の荒廃、或いは越冬地の東南アジアでの山林の伐採が本種の越冬を許さないまでに行われた。伐採された樹木、木材の輸出先は言わずと知れた日本である。ヨタカは今や希少種として探さなければ出会えない鳥となってしまった。
恵山では3羽を確認することができた。しかも3年連続、同じ場所で確認できたことは特筆に値する。
場所は、高岱地区の古武井小学校グラウンドの山側、パークゴルフ場の上部で、今は風力発電機が建設された場所である。その後の生存は観察されていない。
ホトトギス カッコウ目カッコウ科カッコウ属、1属5種のうち4種を確認した。特にホトトギスは、現在渡島半島南部だけで確認されている鳥として特記した。本種は、恵山町各所で確認できたが、古武井小学校校地内のクロマツ林内で繁殖したのを確認した。他の3種は、カッコウ、ツツドリ、ジュウイチである。この3種もその生態から本町内で繁殖していることは十分に認められる。このうちジュウイチも、現在では数少ない鳥として他の地域でその行動に接することはない。
トラツグミ スズメ目ツグミ科トラツグミ属、ヨタカの減少に比し、近年、森林帯に増加してきた野鳥である。かつては、横津岳北斜面、南茅部町泣面山、熊泊山、などで僅かに鳴声を確認していた程度である。しかし、近年、七飯町、上磯町、木古内町、福島町、松前町でもその鳴声が聞かれ、姿も確認されている。渡島半島一円に繁殖していると思われる。