[女那川地区、川上地区、中浜地区、大澗地区]

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 川上地区を除く3地区は、津軽海峡に面し恵山町内では少ない海岸を持っている。それは海岸が砂浜地で形成されていることである。古武井川河口から尻岸内川河口を経て大澗漁港まで砂浜地が続いている。失われ行く自然海岸に特に砂浜地が残されていたことは特筆に値する。
 尻岸内川の上流部、川上地区にはスギ、トドマツの植林がよく施され美林を成している。そのうえブナ帯としての自然林が要所要所に見られ、ブナ、ミズナラなどの樹木も見ることができた。
 
 クマタカ  タカ目タカ科クマタカ属、北海道RDB絶滅危惧種、国RDB絶滅危惧ⅠB類、国内希少種、尻岸内川河畔には、豊かな緑、樹木が良く成育している。
 2000年1月17日、尻岸内川上流部の川上地区でクマタカを観察した。
 クマタカは、発見時河畔林の上を悠然と上流から、下流に向かって帆翔していたが、広い河原に出ると帆翔しながら上昇、尾根を越えて消えた。本種は留鳥で調査期間中良く本河川周辺で観察した。
 
 シロハヤブサ  タカ目ハヤブサ科ハヤブサ属、北海道RDB希少種、本州の人に限らず、北海道のバードウォッチャーにとっても是非見たい野鳥のようである。
 茅部砂原町砂崎では、例年12月になるとシロハヤブサが渡来し、一目見ようとする人で賑わう。
 しかし、本種の飛翔力は並外れていて、冬季、渡島半島の各所に出没している。
 ハヤブサ類は、海岸の崖地や砂浜を生活圏とし、海鳥のオオセグロカモメを始め淡水性のコガモなどを捕食している。自分より大きい思わぬ獲物を捕え、よたよたと飛んで行くのを見ることがある。
 今まで、シロハヤブサを観察した地域としては、函館市西桔梗町、七飯町藤城、七飯町大沼、桧山郡江差町が上げられる。
 本町では、2001年3月9日に観察した。聞取り調査では、前後1週間は海岸砂丘にいたということである。また、別情報によると、砂原町砂崎を飛び立って北帰行の途中立ち寄ったようで、その1週間前頃から、砂原町砂崎から消えていたという。
 
 カイツブリ  カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属、本種は繁殖期を含む夏、本町で見掛けることはない。
 恵山町では本種が繁殖するような湖沼、池などが無く、繁殖期には本当に見られない鳥である。しかし、冬、1乃至2羽のカイツブリが尻岸内川河口に現れ越冬する。本町でも繁殖していたと思われる場所があったが人の欲望の餌食とされたようだ。
 恵山町発行の、2万5千分の1、恵山町全図によると恵山町高岱の古武井小学校の北に、2か所の池沼の姿がはっきり記されている。国土地理院発行の5万分の1図にもはっきりと記されている。これは池が存在していたことを示している。
 当初、本池での、また周辺での野鳥の生息調査に希望を持ち、地図を手にある辺りを踏査したが発見することができず、聞取り調査で「かつて池があり、砂鉄の掘削、搬出によって出来たもので、その後、産業廃棄物で埋め立てた。それが現在のパークゴルフ場であり、風力発電機の建設された場所である。」とのことが判った。勿論カイツブリやその他の野鳥が生息していたことは、聞取り調査でもその感触を得た。誠に惜しい限りである。
 
 ヤマセミ  ブッポウソウ目カワセミ科カワセミ属、北海道RDB希少種、本種は、カモメよりも少し小さく、よく川に沿って飛ぶ。その姿の美しさ、紋様の素晴らしさから、鹿子翡翠(かのこしょうびん)という美しい別名を持っている。カワセミの仲間で勿論川岸の堅い粘土質の土手、崖や斜面に営巣している。鳴き声は「きゃら、きゃら」と鳴き、鳴きながら飛ぶ、遠くから木の間隠れに飛んで来るのを見る時、一見カモメに似る。
 川上からよく鳴きながら、河口部まで下がってくる。本町では留鳥である。
 
 カワセミ  ブッポウソウ目カワセミ科カワセミ属、一度位は出会いたいと、探鳥会のたびに目標にあげる野鳥である。チイー、というか細い声を上げて飛び去る、声のした方を見ると、カワセミはもうすでに10メートルを過ぎてアシ原の影に消えるところだ。姿、声に似ない憎らしさだ。本町では、尻岸内川上流よりも、下流域に良く出現する。夕なずむ川面に、川中の小石に止まる自分の姿に酔っているように何時までも川中を覗いている姿が印象的である。たまに排水門のハンドルに止まっていることもある。
 女那川地区には、尻岸内川が津軽海峡に向かった河口を開き、その河口は冬期、凍結すること無く河口一杯に広がっている。このため、広い河口域で越冬する鳥や、時化で避難してくる海鳥を観察することがある。
 
 オオハクチョウ  カモ目カモ科コブハクチョウ属、本種は春や秋の渡りの季節、恵山町の上空を通過して行く。しかし、例年、冬、尻岸内川河口で越冬する姿も確認されている。春は、南西方向から津軽海峡を越えて高く低く、恵山を越えて、或いは恵山岬を交わして東へと渡って行く様である。春の鳥類標識調査を高岱で準備していると遠く鳴き交わしながら、高く恵山の峰を越えて行くオオハクチョウの群れをみる。この種も鍵になり棹になって通過して行く。秋は、夜間、又はまだ明るくならない早暁、恵山上空を鳴き交わしながら姿も見せず通過して行く。この他にも、マガン、ヒシクイなども通過している。
 
 コクガン  カモ目カモ科コクガン属、本種は、例年12月初旬、本町に姿を現す。岩礁のある海岸にどんどん数をまして最終的には50羽を越す群れを形成する。食性は、アオサと言われている。
 主に大澗漁港の外側、岩礁地帯にいて採餌に忙しいが、海が時化ると尻岸内川河口に避難し、キタヨシの根方に体を寄せて時化の通り過ぎるのを待っているようだ。満潮のときは、沖に出るが、近年、各種養殖用の筏の浮き球についた海藻などを食しているのを観察した。このときは広い範囲に散らばっているようだ。