新しい椴法華村の発展方向

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 一 生活福祉の充実
 村民の日常生活上必要な生活関連施設の整備、生涯を通して不安のない生活の確保と社会的に弱い立場にある人々の救済、安心して生活できる就業の場の確保など施策の選択、重点的な展開を図ることが必要である。
 このような考え方に立って、保健医療の確保、社会福祉の充実、交通の安全、災害の防止などの安定かつ安全な村民生活の実現を図るとともに、住宅や生活環境施設の整備、自然環境の保全を図っていく必要がある。
 二 新しい精神風土の醸成
 近年の過疎化、核家族化の進行など社会構造の急激な変化に伴って、村民意識も変化し、疎外感や孤独感を訴え、社会連帯の意識が薄れるという傾向がみられ、人間性の回復や社会的ルール尊重など精神的充実を求める気運が高まってきている。
 このようなことから、新しい椴法華村づくりにあたっては、心身とも健全な人づくりを進めるため、何よりも教育の充実、スポーツの振興が重要であるが、椴法華村の風土に根ざした新しい文化を創造するとともに、コミュニティ活動やボランティア活動を通じて人々の対話や温かい心の交流を深め、われわれの村意識を育て、村づくりの一員としての自覚と連帯意識を高めていくことが極めて大切である。
 三 活力ある産業経済の実現
 椴法華村の産業構造は、水産業を中心に、林業の特用林産物と恵山道立自然公園を擁して観光といったように、単調なために社会資本の蓄積が立ち遅れている。このような産業構造を改善していくためには、第一に主産業である水産業の振興であり、恵まれた海洋資源と栽培漁業の適地などの有利性を活かして、資源の維持、培養に力点をおいた計画的な生産体制を確立し、生産物の付加価値を高める加工技術の導入により高次水産加工製品の生産などの地場資源工業のような関連二次産業の開発が必要である。
 農林業についても、椴法華村の温暖な気候、風土に適した農畜産物の生産など大きな潜在力をもっており、立地特性を活かして、積極的な施策の実践によって、生産性向上に努めることが肝要である。このような観点から農林水産業の生産基盤を整備し、その安定的発展を図るとともに、生産物の付加価値を高める関連産業の振興を推進し、多角的な生産体系の確立を図り、今後の発展が期待される観光レクリエーション関連産業の振興により産業の適切な地域配置と高度の産業構造の創造をめざし、生産と消費を結ぶ流通機能の整備、市場の開拓を進め、活力ある産業経済の実現に努めていかなければならない。
 四 自治能力の確立
 椴法華村は、明治九年、旧尾札部村より独立、以来、すでに一世紀を経過し、人口、世帯数、行政区域面積など極小ではあるが、水産業を基幹とした産業を中心に地方自治が形成されてきた。「地方の自治」が唱道されて、地方自治は新たな事態に直面し、模索の最中にあるが、「真の地方の時代」の実現のため、最大限の努力をする必要がある。
 この計画は、椴法華村の自治基盤を確立し限りない発展に向けて、地域特性を活し、村民福祉の向上、産業の振興などを長期的、計画的かつ効率的な施策により推進して、村民と村政がともに自立と連帯の精神に基づく自治意識の形成をめざすものである。
 次に三大計画の中枢となっている過疎地域振興計画の概要を記してみる。
 
  一 基本的事項
  (イ) 椴法華村における過疎の実態
    ① 過疎化現象の実態とその原因
    本村の過疎の実態は、本来基幹産業であるべき水産業が、回遊魚族の激減により沿岸資源の再生産力の低下が著しく、併せて漁船漁具等の近代化が進むにつれて、合理化・省力化により家族単位の経済活動が定着し、家族以外に求められていた乗組員や零細漁民は、就業の場が著しく不十分となり、道内外の出稼就労で生計を維持し、大半が兼業漁業化を余儀なくされている。
    本村の産業構造は自然的・地理的条件から、第一次産業(自然資源に依存した獲る漁業)の占める割合が非常に高く、長い間生産供給基地化されてきたため加工技術の蓄積、社会資本の蓄積が十分でない現状である。高度成長期を通じても第二次、第三次産業の進展が見られないため、主力産業の第一次産業だけでは住民に魅力ある雇用の場を提供できず、その結果、若年労働者の進学、結婚による世帯員の一部転出等、人口の減少は鈍化しつつあるというものの流出は依然として続いている。
    このような観点にたつと産業基盤のぜい弱化と急速な高齢化社会の進展は、ますます深刻化しているのが実態であり、事態が容易に改善されない背景には次の制約条件があると思われる。
    第一は、地形の険しさ、土地利用の可能性の少なさなど地理的条件に恵まれていないことが、多くの困難な負担をもたらしている。
    第二は、安定した収入を得られる就労の場が少ないことである。
    第三は、第一および第二の問題点が関連して地域活力を次第に弱め、相対的な貧困や諸機能の低さなどの「社会のひずみ」の悪循環が起こりかねないことである。
    ② 過疎対策に基づくこれまでの対策とその評価
    本村における旧過疎法及び新過疎法に基づくこれまでの対策は、過疎地域振興の大きな柱であるところの、居住環境の整備に重点的に取り組んだ結果、居住条件は逐年改善が図られ、相当の成果が挙がってきている。
   交通通信体系の整備対策は、道路整備については村道幹線道路のほとんどが改良舗装され、生活路線の整備も進み、し尿汲取等、日常生活に不便をきたしていた諸問題が相当解消されている。特に防災行政無線が部分的に整備がなされ、民心の安定が図られたことは大きな成果である。
   教育文化施設の整備対策は、小・中学校の改築が図られ、快適な教育環境の場ができ、更に複合的機能を有する過疎地域総合センターが建設され、社会教育活動推進の拠点ができたことは大きな前進である。
   生活環境施設及び医療の確保対策は、生活館、特別母と子の家、公共施設の整備、簡易水道、消防施設の整備拡充が図られてきており、医療については、高齢化社会が進み住民個人個人に対する健康対策が必要とされている現状で、待望の保健婦を確保でき、住民の健康管理対策に踏み出すことができたことは大きな前進である。
   産業の振興対策は、主産業である漁業振興のため、共同作業所、燃料給油施設の設置等、漁業の近代化対策と、獲る漁業から育てる漁業への脱皮を目ざし、コンブ・ウニ等増養殖施設整備、大型魚礁、人工礁の投入等、生産基盤の整備対策を進めてきたが、所得水準の向上、雇用の場確保という観点からは、いまだ他地域より相当立ち遅れている。

別表一 過疎対策に基づく対策事業実施状況 (S四十六~S五十八)


別表二 対策事業実施財源内訳の状況 (単位:千円)
注 ( )内は構成比を示す

   以上、別表一、二のとおり公共施設等生活環境の整備は逐年改善が図られ、新旧過疎法に基づいて講じられてきた対策は順調に達成され、相当成果が挙がり生産基盤整備についても徐々に効果が現われてきている。しかし、所得形成、雇用の場確保という観点ではいまだ貧弱な現状である。
   ③ 椴法華村における今後の見通し
   近年になって本村の人口減少傾向は鈍化してきた。しかし、このことをもって過疎からの脱却が進んでいるとみてはならない。
   若年労働力を中心に人口の流出が続いた当村は、産業基盤のよりぜい弱化、急速な高齢化社会の進展により、ますます深刻になっているのが実態である。
   今後本村が過疎から脱却し、強い連帯意識に支えられた望ましい地域づくりを進めるためには、現状を認識し地域の特性に応じた進むべき方向を定め、その目標に向かっていかなければならない。
   本村は都市では既に失われた美しい自然、可能性を秘めた地域資源、強い連帯意識など過疎地域特有の財産があり、これを見直し、再活用することにより新たな産業おこしと、地域風土に根ざした独自の地域社会を、創造し得る可能性を占めている。
   そのためには産業を振興し、安定した収入と魅力ある多様な就業の場の確保と、地域活性化が最重要課題である。
   本村は、自主財源に乏しい財政事情ではあるが、過疎債の活用、積極的な国費、道費の導入を図ることにより、地域資源を生かした産業振興が可能になり過疎脱却の道が開ける。
  (ロ) 椴法華村行財政の状況
   ① 行政の状況
   本村の行政機構は、別表のとおりであるが、近年の社会経済の発展に伴い、高次な行政サービスを求める住民のニーズは、年々複雑多様化し、行政事情も複雑化、事務量の増大等が問題となっている。
   このため、今後の行政推進にあたっては、住民の要望に対処し得る行政機構の確立が迫られており、この一端として、昭和五十五年度に新庁舎を建設して、住民窓口の一本化、各係の整備廃等の機構改革を行い、事務処理の効率化と有機的連携を図る行政の総合的改善を積極的に推進している。
   また、道路交通網の整備進展により、モータリゼーションの発展が著しく、住民の日常生活圏や経済圏は急速に拡大され、医療・福祉・教育文化等のあらゆる領域に広域化が進み、本村においても、昭和四十五年から戸井町尻岸内町、椴法華村の近隣三ヵ町村で恵山地区衛生処理組合を設立し、環境衛生面での充実を図る一方、昭和四十九年には消防対策面においても、砂原町、鹿部村(昭和五十九年現在鹿部町)、南茅部町、椴法華村、尻岸内町、戸井町、の六ヵ町村で渡島東部消防事務組合を設立し効率的な広域行政を図っている。
   ② 財政の状況
   本村における財政運営は、別表で示すとおりであるが、行政の多様化に伴って、行政需要はますます高まる反面、財政構造では、依然と村税の伸び悩み、地方債依存度の増大、人件費、公債費等の義務的経費と、一部事務組合等への負担金の増嶼で経常収支率が上昇し、財政構造は一段と硬直化が進み、非常に困難な状況を迎えつつある。
   このため、旧過疎法等における後期計画の昭和五十年度からは、財政計画を策定し、投資総量の把握、財源の確保等、計画的な財政運営に徹しているが、安定成長期の経済情勢の中で、高い財政収入の伸びは期待できず、長期的な住民福祉の充実の目標に向っての諸施策、産業基盤整備等に対する投資的経費に的確な財政見通しが立てにくい。
   尚、昭和五十五年と昭和五十八年度の決算を見ると、歳入、歳出総額とも三七パーセント~三八パーセント程度下がっているが、これは、昭和五十五年度に過疎地域総合センター、庁舎建設事業費が含まれているためで、実質的には村税等の自主財源は横ばいで、一般財源の伸びは地方交付税によるものである。
   また、歳出総額のうち、投資的経費が九・六パーセントを占めているが、そのうち過疎対策事業費は八七・八パーセントを占めている。
   このように、特定の財源を有しない本村にとっては、自主財源率が一〇パーセント弱で大半は依存財源によっており、今後は、より一層歳出の徹底した節減合理化に努め、積極的に国費、道費の導入を図り、効率的な財政運営により健全財政の維持に努める必要がある。
 これらの実態や財政の状況から今後の整備対策とその計画を述べてみる。
 一 交通通信体系の整備
  (1) 道道元村・恵山線の早期開削を要望する。
  (2) 村道の整備を図る。
  (3) 林道網の整備を図る。
  (4) バス路線の運行確保と運行回数の増加を要望する。
  (5) 函館ローカル放送視聴を図る。
  (6) 冬期間の交通確保を図る。
  (7) 地方港湾椴法華港の整備を図る。
  (8) 防災行政無線の整備を図る。
 二 教育文化施設の整備
  (1) 小・中学校グラウンドの整備を図る。
  (2) 幼児教育の普及充実を図る。
  (3) 函館市内の高校へ自宅通学実現のため、通学バス実施を関係機関に要望する。
  (4) 社会教育、社会体育の推進と指導者の養成・確保に努める。
  (5) 青少年の健全な育成を図る。
  (6) 村民プールの新設を図る。
  (7) 村民グラウンドの新設を図る。
  (8) 集会施設の建設を図る。
 三 生活環境及び福祉厚生施設の整備
  (1) 簡易水道施設の整備を図る。
  (2) 排水施設の整備を図る。
  (3) 住宅用地の確保を図る。
  (4) 簡易ごみ捨場の整備を図る。
  (5) 公園造成と緑地確保を図る。
  (6) 老人の生きがい対策の強化と就業機会の増大に努める。
  (7) 保育園機能の充実を図る。
  (8) 婦人の就業機会の増大を図る。
  (9) 消防施設の整備を図る。
 四 医療の確保
  (1) 医師、看護婦等医療従事者の確保を図る。
  (2) 医療施設、器具の整備を図る。
 五 産業の振興
  (1) 農地の再利用と農業振興に関する基礎的調査、研究を図る。
  (2) 人工林の撫育管理を図る。
  (3) 特用林産物の栽培促進と基盤整備を図る。
  (4) 増養殖事業(コンブ、ホタテ、ウニ等)の推進を図る。
  (5) 漁場造成事業(自然石投入等)の整備を図り大規模漁場造成(コンブ礁等)の整備を要望する。
  (6) 漁業関連施設の近代化を図る。
  (7) 流通機構の改善と水産加工の育成を図る。
  (8) 後継者の育成を図る。
  (9) 自然公園の保護、育成を図る。
  (10) 自然公園の施設整備を図る。
  (11) 観光産業の開発促進を図る。
  (12) 観光開発エリアの設定と用地の確保を図る。

表-二(一)行財政の状況 (単位:千円)


行政機構図


財政の推移(昭和五十五年~五十八年) (単位:千円)(地方財政状況調より)