蟹田町に所在する大平山元(おおだいらやまもと)遺跡はⅠ・Ⅱ・Ⅲの三遺跡に分かれている。昭和五十(一九七五年)から同五十四年まで試掘を含めて五次にわたる調査が
青森県立郷土館により実施された。大平山元Ⅰ遺跡は彫刻器・削器・石鏃などのほか、長者久保遺跡と同様な局部磨製石斧に加えて無文(むもん)
土器が発見され、大平山元ⅡおよびⅢ遺跡では、石組炉や
礫群ならびに
石器製作を示す痕跡があり、なかでもⅢ遺跡は、細石刃(さいせきじん)の石核(せっかく)と扇状の剥片
石器が出土している。
大平山元(1)遺跡から出土した彫刻器・削器・石鏃
なおこの遺跡の特色は、局部磨製石斧と
無文土器が共伴すること、大型尖頭器の片側を剥離してスキー状スポールを作り、残りを利用して、細石刃を製作する湧別(ゆうべつ)技法の先駆的な技法がみられることなど、
旧石器的な
石器製作と
土器の共伴により、
旧石器文化から
縄文文化への移行期における両文化の混在がみられ、研究者の強い関心を集めている(13)。