全国的にいえば、町人には冥加(みょうが)・運上(うんじょう)(ともに商・工・運送等の営業者に課した江戸時代の雑税)のほかに租税はほとんどなく、武士の生活の向上とともに富み栄え、農村へも進出した。町人一般の平常の食生活をみると、比較的質素であったと思われるが、江戸の町人は初物(はつもの)食いを珍重し、季節の売り物の魚・野菜を喜ぶ風習があった(波辺実『日本食生活史』一九六四年 吉川弘文館刊など)。
津軽弘前藩の町人の食生活については、断片的に法的規制などから推定できる程度で、具体的にはほとんど不明である。ただし、有力商人の金木屋に残された、幕末期の「金木屋日記」によって、富裕な町人の食事を垣間(かいま)見ることはできる。