勧業費支出ニ対スル意見
二、前表ニ依レハ、本県ノ勧業費予算ハ其生産高ニ比シ、農業ハ千分ノ七六・七、水産ハ千分ノ一二・三、林産ハ五二・一、畜産ハ三三・一ニシテ工産ハ僅ニ千分ノ一・一七ニ過キス、本県ノ勧業政策カ如何ニ工業ヲ軽視シ居ルカヲ知ルヘシ
三、然レトモ天恵薄キ本県ノ如キ土地ニ於テ、県民ノ生活ヲ単ニ天然物ニノミ托セントスルハ頗ル危険ナルノミナラス、天然力ニハ限度アルヲ以テ、如何ニ保護奨励ヲ加フルモ其発達ノ程度頗ル遅々タルハ既往ノ経験ニ徴シテ明ナリ、況ンヤ本県ノ貧弱ナルハ工業振ハス日常ノ諸品尽ク移入ニ仰クニ起因スルモノ多キニ於テヲヤ
四、殊ニ本邦ノ大勢ヨリ見ルモ農業ノ如キ原始産業ヲ以テ立国ノ基礎トセル時代ハ既ニ経過セリ
五、故ニ本県ニ於テモ従来ノ偏農政策ハ速ニ之ヲ更メ、専ラ智能工〔カ〕ノ生産則工業ヲ以テ県民ノ富力ヲ増進スル政策ヲ執ラサルヘカラス
六、従テ工業ニ対シテモ相当ノ経費ヲ支出シ、之レカ保護奨励ヲ為スノ要アルヲ認ム、然シテ其経費ハ幾何ヲ支出スルヲ適当トスヘキヤト云フニ、吾人ハ水産、畜産、農産等ノ事例ニ見テモ、少クモ工業奨励ニ対スル年額四五万円ノ経費ヲ支出スルヲ適当ナリト信ス
七、右ノ経費ヲ実行事項ニ就キ按排スレバ左ノ如シ(後略)
写真167 県立工業試験所
省略した部分には、勧業に関する費目と金額、その説明が書かれている。項目名のみを記せば、それらは、工業試験場費、商工協会補助費、県外物産館費、既設物産館補助費、物産陳列紹介補助費、視察費、専門技術者費、授産場補助費、機械買入費、共同施設補助費、補習教育費などである。なお、別表(第一号)は表56である。長尾市長らの意見は、農業に偏しない勧業費の支出を行い、工業を奨励すべきだというものであった。
表56 別表(第一号)生産額・勧業費対照表 |
生産額(円) | 勧 業 費(円) | 産額ニ対 スル勧業 費ノ割合 | ||||
経 常 | 臨 時 | 補 助 | 合 計 | |||
農 業 | 17,945,687 | 106,917 | 8,953 | 22,000 | 137,870 | 0.0768 |
水産業 | 2,658,683 | 26,880 | 4,598 | 1,100 | 32,578 | 0.1225 |
工 業 | 4,698,478 | 5,221 | 300 | 5,521 | 0.0117 | |
林 業 | 2,665,344 | 13,887 | 13,887 | 0.0521 | ||
畜産業 | 921,865 | 29,502 | 1,000 | 30,502 | 0.3131 |
青森県立図書館所蔵青森県内務部作成資料による |