秩父宮雍仁(やすひと)親王殿下には陸軍歩兵少佐に御昇任と同時に、弘前歩兵
第三一連隊大隊長として弘前に御着任された。殿下が妃殿下とともに
弘前駅に御到着になったのは昭和十年八月十日午前八時五十二分、直ちに紺屋町の御仮邸(
菊池長之別邸、現明の星
幼稚園敷地)に入られた。市内各
小学校では全校児童が
駅前に整列し、各校校長は駅構内に出向いて奉迎した。また、
津軽義孝伯爵は旧藩主子孫として弘前においでになり、駅頭において宮殿下をお迎え申し上げた。八月十九日、市内奏任待遇校長たち八人は
秩父宮家へ参上、御機嫌を奉伺して記帳した。同月二十四日
弘前市公会堂において、本市在住の宮中席次を有する者に対して列立賜謁があり、奏任待遇校長たちは参列の光栄に浴した。
秩父宮殿下は、御軍務御多忙の中をお暇をみては学校の視察をなし、それは弘前市内にとどまらず県下全般にわたられ、本県教育の向上に大きく寄与された。宮両殿下の弘前御滞在は一年四ヵ月にわたられたが、十一年十二月七日午前九時四十分、御退去された。この日も弘前市内各校の生徒児童は全員、沿道に整列して両殿下を奉送申し上げた。
写真53 秩父宮御夫妻御出席の小学校児童唱歌遊戯の会