新制中学校の開校式

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県教育民生部は「新学制実施について」という通達を出し、「新制中学校は、必ず四月二十一日開校のこと」としたが、弘前市の各中学校は準備が間に合わなかったのか、四月二十二日に開校式を行っている。
 「すべては、出発したあとに考える」という状態であったのはどこも同じだが、曙町(現桔梗野三丁目)にあった旧第三一連隊兵舎(当時は市立高等女学校校舎)の一部を使用することになった第三中学校は、机、椅子はもちろんのこと、紙一枚、チョーク一本ないという状態で出発しなければならなかった。

写真131 第三中学校が発足当時校舎として使用した桔梗野旧歩兵第31連隊兵舎跡

 しかし、第一中学校の場合は、高等科生徒が使用していた机、椅子、教具を引き継いだので、校舎や教室の面で不自由な面はあったが、さしたる支障はなかった。第二中学校の場合も市立商業の校舎を借りていたので同校講堂で、また、第四中学校は青森師範学校の仮用附属になることが決まっていたので、附属小学校(朝陽小)の講堂で、それぞれ開校式を挙行した。
 ただ、第三中学校だけは前述のような状態だったので、旧軍隊で使用していた雨覆場(屋根と柱だけの土間)に生徒を集めて開校式を行わなければならなかった。当日、生徒に付き添ってきた父兄は、あまりのみすぼらしさに仰天し、「とてもこんな学校には入れられぬ」と、即刻私立学校へ転校手続きをとったものもあったという。事実その年は、公立に比し校舎や教具が完備している私立中学校東奥義塾、聖愛中、柴田中)へ進学する者が例年になく多かったという。この日開校した弘前市の中学校の組織、学級編成は表28のとおりである。
表28 新制中学校発足時の組織と学級編成
校名校長職員数生徒数学級数所在地学区
第一中学校土屋直好二二1三五五一五弘前市元寺町時敏小
2二九〇時敏小学校に設置和徳小
3五〇  
第二中学校工藤秀俊一三1一六三弘前市蔵主町四城西小
2二〇一弘前商工学校の一部を借用 
3三九  
第三中学校山辺将二郎一五1四三九弘前市富田曙町一大小
 市立高等女学校の一部を借用二大小
    
第四中学校須貝清一一四1二七一弘前市元町一朝陽小
2三〇青森師範学校附属小学校の一部を借用 
3三七  
(「生徒数」欄のアラビア数字は学年を示す)