誘致反対論

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商工会議所の請願に対し反対派の請願も提出されている。津軽保健生活協同組合は、まず反対意見として、岩木山麓開発事業が始められるときに自衛隊が誘致されれば、笹森山山田野演習場とされ、地元民の生活根拠が奪われると主張する。また自衛隊が来れば、当時「パンパン」と呼ばれた女性たちがやって来て性病が流行し、風紀が悪くなるという。これは明らかに進駐軍と彼らに媚(こ)び寄っていった「パンパン」たちの姿を重ねた主張だった。自衛隊が存在すると、将来戦争が始まれば敵襲を受ける可能性もあると主張している。いずれも過去の弘前市が経験したことにちなんで反対運動を表明していることがわかる。
 反対派の主張には、戦争への反省と脅威が根強くあった。憲法第九条の影響もあるだろう。藤森市長を会長とする市の原水爆禁止運動と、誘致問題は矛盾するとも指摘している。ゆえに「自衛隊を誘致して弘前市に金をおとさせ、商売を繁盛させるということは間違いであ」つて、それよりも「岩木山麓の開発を強力に行い、農業を盛んにし、弘前を学問と文化と産業の中心にするという市民の声を」主眼にしたいと締めくくっている。
 反対派の主張は経済効果よりも、学都弘前観光都市弘前の発展をはかることに眼目があった。賛成派は市の経済的繁栄を主張し、反対派は学都・文化観光都市の発展を主張するなど、いずれも自衛隊の問題が弘前市発展の方向に多大な影響を与えるという点では共通していた。

写真152 原ヶ平の陸上自衛隊弘前駐屯部隊(昭和43年)