飲食業のあり方

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昭和五十年代の後半は、安定成長下の停滞状況を受けて、商店街が変貌を遂げていく過程が進行した。この経過について、昭和五十五年度の弘前市商業近代化に関する弘前商工会議所の報告は、飲食サービス業については次のように書いている。
 今回の近代化計画において、商工会議所飲食サービス業の実態調査を実施した。調査は全市域にわたるもので、飲食サービス業の経営について、別の視点から眺めて見ると次の通りになる。なお、弘前市の代表的な歓楽街を形成している鍛冶町のスナック(「バー、キャバレー、ナイトクラブ」「酒場・ビヤホール」)についても解説してみることにする。
(1)弘前市の飲食サービス業は個人企業が大半で、九五%を占め、法人組織は僅かに五%に過ぎない。鍛冶町(スナック)では一〇〇%が個人企業となっている。
(2)経営者を性別に分けてみると、女性経営者が三分の二の六五%を占め、鍛冶町(スナック)では七四%の高率となっている。
(3)経営者年令は、サービス業の特性上、若い経営者が多く三九才以下が六三・六%を占め、人的には活性に富んだ店舗が多い。鍛冶町では、この三九才以下がさらに多くなり、七一・五%を占め、一般の飲食サービス業よりもさらに若年経営者が多くなっている。
(4)従業員は家族従業員を含め、男女ともに一人雇傭が殆どで、企業の零細性を浮き彫りにしている。鍛冶町では男性よりも女性雇傭が多く、一~四人が九七・九%を占めている。
(5)商業施設としての建物構造は、鉄筋コンクリート、鉄骨づくりが多く六七・七%、木造もしくはモルタル仕上げが三一%となっている。店舗の所有関係は、自己所有が僅か五・七%で、借家が四八・七%、その他五〇・六%となっていて、企業基盤の安定性に乏しい。鍛冶町も同様四八・九%が借家となっている。
(6)客席面積は、二〇平方メートル以下が七三・一%、一〇一平方メートル以上は僅か二・五%に過ぎない。鍛冶町はさらに小規模店が多く、二〇平方メートル以下の店舗は実に八四・五%を占め、ともに零細な規模と言える。
(7)商店街、同業組合への加入率は低く帰属意識は薄い。
(8)現在の経営状態をどのように見ているかについては「満足している」は僅かに〇・九%、「まあまあである」が三九・六%、「改善したい」三三・五%で全体の三分の一が前向きに改善意欲を示している。反対に「転業したい」八・四%、「やめたい」が一七・六%あり、経営の将来に希望を失っている店が全体の四分の一ある。鍛冶町ではこの「転業したい」八・六%、「やめたい」一九・三%で、さらに多くなっている。不況と冷夏冷害などの影響、先行きに対する顧客の心理的な警戒観などで危機意識が高まり、これがこのような数字となって現われたものと言えよう。
(9)「競争の激しさ」についても八四・一%、鍛冶町八五・四%と殆どの店が訴えている。
(10)経営上の間題点では、客数の減少二七・六%、経費の増加二六・四%、立地条件の低下二一・四%、売れ行き不振二一・〇%、大規模店の影響二〇・〇%となっていて、殆どが販売面のむずかしさを指摘している。鍛冶町でも前述とほぼ同様の訴えである。
(11)さらに、販売の内容については来客数、販売額、客単価、荒利益、純利益など何れも減少しているとした店が多く、七二・八%~八一%の店が苦境を訴えている。一方経費についても増加している店が八二・八%あり、総合的に見て経営の悪化している店が大半となっている。鍛冶町でも同様の傾向が出ている。
(12)同業店の新規出店については、絶対反対二二・六%、条件付賛成六三・二%、積極的に誘致賛成七・六%である。鍛冶町では絶対反対三〇・〇%、条件付賛成六五・三%、積極的に誘致賛成四・七%と、条件付賛成を示す店がともに三分の二を占め、出店による競争激化よりも業者数の増加で集積度を増し、相互補完によるメリットを意識したものと受け取れる。
 その他鍛冶町のナイト飲食ゾーンにおける特色としては、客単価の低い点があげられる。一人当たり客単価一、〇〇〇円以下二一・六%、一、五〇〇円以下三一・九%、二、〇〇〇円以下二七・一%で二、〇〇〇〇円以下を集計すると、実に八〇・六%になる。この客単価の低さについて理由はいろいろあろうが、人件費高騰による女性雇傭の減少、冷害と不況による節約ムードの浸透、外部からの新規客吸引の魅力の欠如などがあげられよう。
 住宅都市であり、文化・観光を志向する弘前市の飲食サービス業は、近隣都市の中においても、その成立基盤は比較的恵まれていると言えよう。(中略)

写真177 鍛冶町界わい

 一方、飲食店の数も七〇〇~八〇〇店と多いが、特色のある店は少ない。しかも鍛冶町の場合、他都市のように観光パンフレットに紹介されるということもなく、外来者へのアピールは極めて弱い。その他、飲食サービス業の中にメニュー構成で特色をもった店の少ないこと、又学生、生徒などのヤングが欲求するファストフードショッピングの少ないことも魅力に欠ける要因となっている。
 これらを要約すると、弘前市の飲食サービス業は、まだ未成熟な面も多く持っており、顧客の欲求レベルに達していないということが言えよう。
(『弘前商工会議所会報』二八六号)

 このように、飲食業について注文が多く出されている。また、観光レジャー産業の振興についても市内観光コースの設定、観光案内板の設置、駐車場の増設等が必要であることが強調されている(同前、二八七号)。