図-4 扇状地と山麓緩斜面
札幌扇状地は、南区真駒内の南端、標高九〇メートル付近を扇の要として北へ向かって八〇度くらいの角度で開けている。扇状地の末端がどこかとなると、なかなかむずかしいが、ひとつの目安は、その昔、アイヌの人たちが「メム」と呼んでいた泉の湧出地である。この湧出地点をつないでみると、扇状地と沖積平野の境界は、およそ一五メートルの等高線と一致する。具体的にいうと、西は北海道神宮付近、中央部は北海道大学の南端付近、東は白石小学校付近を通る線上である。扇頂からこの線までの軸長は約一〇キロメートルで面積は約二八平方キロメートルとなる。しかし、扇状地堆積物を目安とした場合の扇端は、北へ四キロメートルほど延長され、面積も六〇平方キロメートルに達する。この札幌扇状地は単一の地形面ではなく、真駒内から中の島間の豊平川右岸(東側)でみられるように、比高一五メートル~五メートルくらいの一段高い平坦面(平岸面)と中心部が広がる平坦面(札幌面)の二つの地形面に区分される。
平岸面は地下鉄平岸駅を中心とした平岸街道が走る平坦面で、かつてはリンゴ園が広がり、牧歌的な景観が展開していたところである。この平坦面の頂点が真駒内川沿いの警察学校付近(標高九〇メートル)であり、末端部は北海学園大学付近(同三〇メートル)である。それより北では札幌面との境界は不明瞭になり、地形的には札幌面に併合されてしまう。
札幌面は真駒内泉町付近(標高八〇メートル)を頂点として北に広がっている。末端は先に述べたように、一五メートル等高線付近である。原地表面は北大植物園内でみられるように小起伏に富んだものである。
このように、札幌扇状地が二つの地形面に分かれていることは、この扇状地が二時期にわたって形成されたことを示しており、一段高い平岸面が古い時期の扇状地で、当時の豊平川は石山陸橋付近から真駒内方向に流れていたと考えられる。新しい方の札幌面は豊平川の流路が石山~川沿方向に変わってから形成されたものである。それは更新世の末期、およそ二万年以降のできごとである。