図-3 支笏軽石流噴出直前の古地形
―軽石流の基底の等高線(単位m)を画いたもの―
支笏軽石流堆積物は、先に述べたように、支笏湖を中心に広範囲に分布している。いま、その堆積物の下限を、札幌市域外の低地部で探ってみると、千歳、恵庭付近で海面下四〇メートルであるが、南へ行くと次第に深くなり、白老町社台では、海面下七五メートルとなっている。しかも、これらの地域の軽石流堆積物も高温下での溶結作用がみられることから、水中で堆積したものではなく、陸上で固結したものと考えられるのである。事実、この軽石流堆積物の下盤には、しばしば泥炭層がみられ、軽石流が陸上の堆積物であることを示している。したがって、支笏軽石流の噴出時期には、海水面は少なくとも七五メートルは低下していたことになる。さらに、低地帯南部における軽石流の下底の等高線が示す古地形から、この時期には、千歳川や漁川(いざりかわ)はもちろん、夕張川、石狩川も太平洋に注いでいた可能性がある。となると、これらの河川が日本海へ流入するようになった要因は、千歳―美々―早来を結ぶ、ほぼ東西方向に流れた軽石流が形成した台地によって、太平洋への流路を遮断されたためと考えられるのである。