まず挙げられるのは社会改良団体として位置づけられる北海禁酒会によるものである。同会は結成の翌二十二年六月に、月刊の機関誌『護国之楯』を刊行したが、内容は会の主張、演説会記録、会の活動、全国の活動状況などとなっていて、本文三〇頁をこえることもあった。同誌は二十九年に六一号を発行したことが確認されている。同会はこのほかにも主義普及のため『禁酒の手引』、『アルコール問題』などを発刊した。同じ社会改良団体として分類される北海道医事講談会(二十年六月結成)は、機関誌として二十二年二月に『北海道医事講談会月報』を発刊し、二十四年一月に編集人を変更してなお継続している。
また学習・自己啓発的団体である北海道学友会(二十年十一月、北海道雄弁会の名で発足)は、二十二年三月に機関誌『北海道』を発刊した。二十四年に一五号までを刊行したが、この頃で会の活動自体が中断した。この雑誌の内容を第二号によってみると、会員論説が四本、講義が二本、それに北海道一班、史伝、文苑、寄書、本会記事からなっている。一五号には二十四年二月開催の総会報告が掲載されており、決議の第四に「雑誌を改良シ教育事項ヲ増加シ及ヒ発売品トナス事」とあるが、この意図は実現することなく終わった。
写真-14 『北海道』第三号(道図)
また二十五年に札幌農学校予科生徒によって結成された学芸会は、会規則第五章において『蕙林』と名付けた機関誌を毎号発行することを定め、同年五月に創刊した。内容は本会記事、論説、学術、文芸、漫録、雑報等からなり、二十九年四月発行の一九号から『学芸会雑誌』と題号を改めた。このほか半官半民的な存在であるが、北海道教育会発行の『北海道教育(会)雑誌』(二十四年三月創刊)などが挙げられる。
また、各結社および札幌において文化的活動を行った人々によっていくつかの文化的に貴重な図書が刊行された。たとえば札幌史学会によって三十年二月に、札幌に関する最初の史書である『札幌沿革史』が刊行され、また三十一年五月には学芸会によって『札幌農学校』が刊行されたが、この同校を紹介した書は「漢文調で堅くはあるがロマンに富んだ名文」で(高倉新一郎 覆刻版解説)あったこともあり、翌年に再版、三十五年に増補三版を重ね、同校の名を全国に知らせることとなった。