ビューア該当ページ

札幌区の除雪行政

112 ~ 114 / 915ページ
 札幌区内の除雪は、北海道区制施行以前は北海道庁で行っていた。区制施行以降についてはしばらく不明であるが、明治三十六年十二月第二四回区会で、助川貞次郎が区費による除雪を提案した。その提案文は未発見であるが、区会の議事録によると提案理由は、「停車場ヨリ大通ニ至ル西四丁目ノ道路ハ冬季中積雪ノ為メ通行甚タ不便デアリマスルカラ、三十六年度ヨリ之ヲ実効致シタイ希望デアリマス」である。どの費目で費用を捻出するかについては区の理事者に任せた。それに対し区の助役である石丸弘陽は「大通迄ハ停車場モアリ彼ノ処ハ停車場通フリデ大切ト云フカラデアルダロート思ヒマスガ、一体コー云フコトハ理事者ニ於イテモ未タ経験ガアリマセン。充分調査ヲナシタ上デナケレバナリマセント思ヒマス。」と答え、除雪行政の難しさを強調した上で、助川に対し「御提出者ハ御眼案ニテモアリマスルカ」と腹案を問うた。助川は「多少眼案ガアリマス。朝降雪アレバ昼ハ晴レ又夕刻ト云フ割ケテ其都度雪除ヲスルコトハ際限ガアリマセンカラ、以前道庁ニ於イテヤッタ如ク朝晩ノ各一回ニ止メテヤリタイ。或ル馬車屋ニ就キ聞込ミマシタノニ冬季間百五十円又ハ二百円アレバ充分出来キルコトニ承知致シマシタ」と答えて、議場の賛同を得た。この提案は満場一致で決定した(区会議事録 明36)。
 そしてこの費目は、第五款衛生費第四項掃除費八目道路雪除費として、三十六年度の追加予算に一五〇円で計上された。決算額は五三円一〇銭である。以降の大正七年度までの決算額は、表14のとおりである。その後昭和二年まで除雪費は札幌区(市)の予算に計上されない。これは大正七年にできた路面電車の会社が、電車営業のために行うようになったためと思われる。そして札幌市がこの電車会社を買収して、電気局として電車の営業を開始したのが昭和二年である(札幌市事務報告 昭2)。
表-14 札幌区の除雪費決算額表
経常臨時費歳出合計経常費歳出合計除雪費備 考
明36109,644円37283,688円44053円100第五款衛生費第四項掃除費八目道路雪除費,
予算150円
3799,238.90078,768.632130.000同上,予算150円
3889,794.23581,338.778171.000第五款衛生費第四項掃除費六目道路雪除費,
予算150円
39112,812.64286,738.342145.000同上,予算150円
40131,229.807100,609.033150.000第三款土木費第三項雑費三目道路除雪費
停車場通道路除雪費
41283,932.439140,818.298144.000同上,予算144円,冬期四ヵ月間除雪費
42244,800.309142,149.878144.000同上,予算144円
43341,654.232165,368.800100.000同上,予算120円,入札ノ結果ニ由ル
44290,138.410223,463.85094.100第三款土木費第三項雑費二目道路除雪費
予算120円,入札ノ結果ニ由ル
45287,225.443202,852.27395.000同上,予算100円,入札ノ結果ニ由ル
大 2282,234.222194,197.17290.000同上,予算90円
3281,300.489206,886.34990.000同上,予算90円
4255,924.403218,025.20390.000第四款土木費第三項雑費二目道路除雪費
予算90円
5297,973.830217,683.75090.000同上,予算90円
6336,060.000257,527.04015.000同上,予算30円,
除雪費ノ支出少ナカリシニ由ル
7404,072.260351,367.540同上,予算30円,
除雪費ノ必要ナカリシニ由ル
1.明治40年分は決算報告が未発見のため予算額。
2.札幌区『区会関係書類』(明36~大9)決算報告より作成。

 明治三十六年以降大正七年までの除雪範囲は、正確に把握できない。しかし三十九年度予算書の道路雪除費の備考に、「停車場通道路雪除費」とある(区会決議録 明39)。また『札幌区事務報告』の「自明治四十年十月至四十一年九月」「自明治四十四年十月至大正元年九月」「自大正元年十月至大正二年九月」では、除雪した長さをそれぞれ四二〇間、五四一間、五四〇間と記載している。新聞記事によると、四十三~大正元年について、「札幌区停車場通り停車場前より大通南側まで」(北タイ 大1・12・21)と記している。さらに先の議事録の内容と照らして推測すると、西四丁目通の札幌駅前と大通または南一条辺の間くらいを除雪していたようだ。
 新聞記事によると、除雪作業は明治四十三年は停車場人(力)車組合に、四十四年は五十嵐某に、大正元年度は札幌市街馬鉄敷設許可条件に基づいて同会社に請け負わせている(北タイ 大1・12・21)。